ファイル交換ソフト等を利用した著作権侵害行為について

広報・情報部 情報推進課長 貴志武一
 本テーマについては,学内に私よりスペシャリストの先生方が居られますし, また文才もありません。諸所でご勘弁願いますことをはじめに申しあげます。
 警察庁から平成16年8月19日に出された「平成16年上半期のサイバー犯罪の 検挙及び相談受理状況等について」と言う公開文書があります。サイバー犯罪 (情報技術を利用する犯罪)の検挙件数があり,その中の著作権法違反項目に, 平成12年80件,平成13年86件,平成14年66件,平成15年87件,平成16年上半期 96件という統計結果が出ています。平成16年度は昨年と比べて約2.2倍だそう です。
 警察庁の知人に聞いたところ,サイバー犯罪は増加していて,サイバーテロ の部署の人数を平成17年度から増員すると言っていました。増員することによ り,細かな所にも目が行き届き検挙件数も増えるのだろうと勝手に思っていま す。
 著作権法違反いわゆる著作権侵害行為には,「Winny」や「WinMX」等のファ イル交換ソフトを使って音楽や映画ファイルを違法にダウンロードし,本人の 意思ではなく知らず知らずの間に,ダウンロードした音楽ファイル等がアップ ロードされていたものも含まれています。
 某大学で実際に起きたことを記載します。
 某学部研究室のA学生が,研究室のBパソコンよりファイル交換ソフト 「WinMX」を使って,宇多田ヒカルが歌っている「(うそ )みたいなI Love You」のMP3音楽ファイル(MP3は,音声を圧縮し たデータファイルのこと)をハードディスクにダウンロードしました。
 (これからは私の空想です。)
 多分A学生は,音楽を聴くことが目的でダウンロードしたのでしょうから,その音 楽を聴きながら研究課題の情報等を入手したりしていたと思います。
 同じ歌を一日中聴くことはありません。 A学生は音楽を聴くのを止めて,研究課題の情報を整理したり, 別の目的でBパソコンを使っていたことでしょう。 A学生以外の人が使っていたかも知れません。 一日の大半においてBパソコンは電源が入って稼動して いたと考えられます。
 A学生が音楽ファイルをダウンロードして1〜2日後に担当の先生から,某日の某 時某分にBパソコンを使った者はかと,その研究室にいる学生達に聞くと,A学生 が使っていた事が分かり,A学生は先生に呼ばれ,某月某日某時某分にBパソコンを 使って,宇多田ヒカルの「(うそ )みたいなI Love You」をダウンロードしたよね, と問われ,A学生は「( おれ)の行動を良く知っているな。」と思いながら, 音楽ファイルをダウンロードしたことを認めた。 また先生から「君は,音楽ファイルを違法にアップロードしているよ。」と言われ, A学生は「アップロードした覚えが無いので, 何のことか分からない。やっていない。」と答えたでしょう。 先生から「ファイル交換ソフトは,ファイルをダウンロードしたら 自動的にアップロードするのだよ。」と言われて, A学生は初めてアップロードもしていたのかと自覚したことでしょう。 そしてたっぷりと教育指導を受けたと思います。
 その後,Bのパソコンのファイル交換ソフトの「WinMX」と「(うそ )みたいなI Love You」 のMP3音楽ファイル及び関連ファイルを消去され,A学生は,研究室のパソコンの使用 をしばらくの間,禁止されたとか。
 本人は,音楽ファイルをダウンロードしたことは,自覚していましたが,そ の「(うそ)みたいなI Love You」の音楽ファ イルを自分のパソコンからアップロード(発信)していたとは知りませんでし た。自覚なしに違法に所得したソフトを,違法に沢山の人々に送っていたので す。パソコンの電源が入って起動していますので,その間ずっと「(うそ )みたいなI Love You」のMP3音楽ファイルを他の沢山の人々に向けて,送 り続けていたのです。
 では,どうしてA学生の行なった行為が発覚したのでしょうか。
 日本レコード協会や全米の映画社では,違法行為を防ぐために,違法にダウンロード したりアップロードしているパソコンのIPアドレスが分かるシステムを開発して, 機械的に常に監視しています。 ファイル交換ソフトを使って違法にダウンロードすると,

プロトコル ○○○○○(使用したソフトWinny・WinMX・eDonkey等)
IPアドレス ○.○.○.○
ホストネイム ○.○.○.ac.jp(大学の場合)
違法行為日時 年/月/日 00:00:00
ファイル名 音楽(○○○○○.mp3),映画(作品名)

等を記載した「差し止め請求」の通知が,IPアドレスを管理している,プロバイダーや 大学のネットワークを管理している部署に,違法行為をしている旨のメールが届きます。 いつ,どこで,だれが,どのように,なにをしたのか,分かってしまうのです。
 このような行為は,無許諾で他人の著作物を正当な理由(著作権の制限規定内での利用 等)なく利用する場合ですので,著作権等の侵害となります。 著作者は,著作権,著作者人格権,著作隣接権などを侵害されたならば,民事上の救済 措置として「差し止め請求」を行なうことが出来,損害があれば「賠償請求」をすること もできます。 また,著作権等の権利を侵害されたことにより被害者として「告訴」すると, 著作権侵害行為を行なった者は加害者となり「刑罰」の対象ともなります。
 上記のA学生は,幸いに「賠償請求」及び「告訴」はありませんでした。 大学の学部内の処分で済みました。 もし「賠償請求」及び「告訴」をされていたら,今後の人生を棒 に振ってしまうことになっていたと思います。
 ちなみに,宇多田ヒカルの「(うそ )みたいなI Love You」MP3ファイル音楽ソフトは,東芝 EMIより260円で発売されダウンロードが出来ます。 「賠償請求」と「告訴」がされたと仮定し,宇多田ヒカルは全米でも活躍していますの で,1日に1万件のアクセス,アップロード期間は見つかって消去するまでの2日と設定 (甘いかも)すると,

  1. 「賠償請求」は,260円×10,000件×2日=5,200,000円
    (根拠はありません。あくまで想定です。)
  2. 「告訴」弁護士代(着手金,実費,日当,手数料等)
  3. 「刑罰」著作権法で,3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金

交通違反とは(けた)が違います。 260円得したと思ったら大間違いです。 (すご)く危険です。
 正式に購入するのと,「賠償請求」や「刑罰」になるのと,どちらが良いか,良く考 えて行動を取りましょう。行なった行為は全て自分に返ってきます。
 以上で終わりといたします。最後まで読んでいただきありがとうございまし た。