TAINS/Gの次の世代へ向けて

情報シナジーセンター 水木敬明
情報シナジーセンター 曽根秀昭

TAINS の歩み

 TAINS という名称で親しまれている東北大学総合情報ネットワークシステムは,京都大学のKUINS と並んで全国の国立大学に先駆ける形で,1988 年にスタートしました。
 今ではTAINS88 と呼ばれているこの初代TAINS は,コンピュータネットワークの無限の可能性やその重要性を,いち早く当時の東北大学の構成員に実感させるものでした。このTAINS88 は,最先端の技術を取り入れて最高水準のネットワークを実現するという考えに基づき設計・構築されており,この思想はその後のTAINS の設計・構築においても一貫して揺がない基本理念の一つとなっています。
 TAINS88 の運用開始ののち,1995 年には,第二世代のネットワークSuperTAINS (TAINS95) が整備されました。SuperTAINS もまた当時の最先端の技術を取り入れた先駆的なキャンパスネットワークであり,あらゆる大学構成員に広く活用されました。また,その当時にキャンパス間に敷設した光ファイバは,2008 年現在でも学内を結ぶ極めて重要なインフラでありつづけ,その先見性の高さが証明されています。その後1998 年には,幹線の一部にGbE (Gigabit Ethernet) を導入することにより,拡充されています。
 そして,2001 年には,現在運用されているTAINS である,TAINS/G が完成しました。つまり,TAINS/Gは東北大学における第三世代のネットワークということになり,東北大学において世界最高水準の研究・教育を創造するために不可欠な情報基盤となっていることは,改めて言う必要のないことと思います。
 三世代にわたるTAINS は,歴代の総長を始めとする諸先生ご尽力により,文部科学省(文部省)の深いご理解を得て,補正予算等により整備・拡充されてきました。

TAINS/G の現状

 現在稼働中のTAINS/G は,既に6 年を経過し,機能的に旧式のシステムになりつつあります。導入時には当時の最先端技術を用い, 堅牢 ( けんろう ) なネットワークシステムを構築したものの,経年劣化は避けがたく,いつ全学にわたる大規模なネットワーク障害が発生してもおかしくない状況にあります。また,近年のネットワーク利用形態の変化により安全性や利便性の向上が強く求められているとともに,各部局における管理労力の軽減や大学全体としての省力化・効率化を促進する必要があります。しかし,現ネットワークシステムでは,このような安全性の要求や各部局からの利便性の要望に応えることは困難です。以上の理由により,できるだけ早期にTAINS/G を更新し,次世代のTAINS を導入する必要があります。
 一方,特別教育研究経費の概算要求を数年前から継続的に行ってまいりましたが,厳しい現状です。このあたりについての,大学等におけるネットワーク整備の状況については,報告書[1] に詳しく書かれています。

次世代TAINS に向けた最近の動き

 上述のような状況の中,2007 年6 月に「情報基盤アクションプラン策定プロジェクト・チーム」( リーダー:杉山一彦理事,サブ・リーダー:青木孝文総長特任補佐)が総長室の下に設置されました。そして,このプロジェクト・チームは,井上プラン2007 が表明する世界リーディング・ユニバーシティにふさわしい情報化政策の推進を目指し,「東北大学情報化推進アクションプラン」を策定しました。そのアクションプランでは,情報環境の整備を目的として,『情報基盤の高度化』及び『電子事務局の構築』を柱とする四つの重点施策が提言されており,その四つのうちの一つが「全学ネットワークシステム」の計画的整備となっています。
 そして,このアクションプランの提言を受けて,2008 年1 月に学内のネットワークにかかわる有識経験者から構成された「全学ネットワークシステムプロジェクト・チーム」( リーダー:曽根秀昭教授)が設置されました。現在,このプロジェクト・チームは,同年同月に設置された「全学統合認証システムプロジェクト・チーム」( リーダー:木下哲男教授)と連携しつつ,次世代のTAINS の導入に向けて集中的に作業を進めています。

次世代TAINS の基本的要求要件

 これまでに,上述の2 つのプロジェクト・チームや仕様策定委員会によって,次世代TAINS の基本的要求要件の概要を次のように決定しています。
  1. 外部ネットワークと高速かつ安定的に接続すること。
  2. 部局ネットワークに対して多様な接続形態を提供できること。
  3. 安全・安心なアクセス方式が提供できること。
  4. 利便性の高いネットワークサービスを実現すること。
  5. 部局におけるネットワークサービスの管理を全学的に効率化できること。
  6. 高いネットワークセキュリティを提供できること。
  7. 既存のシステムと一体的な運用管理が容易に行なえること。
  8. 24 時間運用に耐えられる高い信頼性を有すること。
  9. 先進的な技術を取り入れて,効率的かつ継続的に運用できること。
 次世代のTAINS の整備にあたっては,学内の皆様のご理解とご協力なしには実現し得ません。東北大学が世界に誇る新しい情報ネットワーク基盤を手に入れ,他に先駆けて次の情報化社会の世界へ進むためにも,皆様のお力添えを何卒よろしくお願い申し上げます。

参考文献

[1]科学技術・学術審議会学術分科会研究環境基盤部会学術情報基盤作業部会, 学術情報基盤の今後の在り方について(報告), 2006. (http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu4/toushin/06041015.htm)