事務用電子計算機システムの更新について

情報部情報推進課事務情報係 藤本一之

1 はじめに

 本稿では,2016 年8 月に本稼働した事務用電子計算機システム(以下「本システム」という。)について記載します。本システムは,1,600 台の仮想クライアントと,6 つの業務システム(人事給与統合システム・財務会計システム・予算照会システム・学納金管理システム・授業料免除システム・勤務時間管理システム)が稼働し,事務系職員の日々の業務を支えています。

2 導入の目的

 本学においてこれまで構築・稼働していた業務システムは,クライアント/サーバー方式,サーバーベースコンピューティング方式,Web 方式と多岐にわたり,それぞれのシステムが独立したサーバーで稼働していました。
 本システムでは,これらの業務システムを,サーバー仮想化の技術を用いて統合・集約し,プライベート・クラウドを構築することにより,限られたサーバリソースを動的に割り当てることや,各業務システムがそれぞれ調達している機器のうち,共有可能な機器は共有し,同種の機器を複数調達することなく,中長期的な投資効果を高めることを目的としました。
 また,事務系職員が利用する端末については,これまではすべて各学部の資産として管理されており,機種も仕様もばらばらで,問題発生時の対処が非常に困難でした。さらに,職員の異動時は継続して使うことができないため,USB メモリなどを使ってメールやドキュメントなどのデータを異動先の端末に移していました。これらの運用方法は,職員の作業負荷が増えるだけでなく,セキュリティの観点からも懸念事項でした。
 本システムでは,仮想クライアントを用い,統一された環境を一元的に管理することでセキュリティを高めること,また,各業務システムがOS やブラウザの種類に影響されずに使用できるようにすることで,本学既存のIT 資産を最大限活用するとともに,将来に渡り更新にかかるコストを削減することも目的に加えました。

3 導入効果

3.1 仮想クライアント

 仮想クライアントを導入したことにより,以下のような効果を得ることができました。
  1. 職員が利用する端末が仮想クライアント環境として統一され,セキュリティ対策ソフトの一元管理が可能になり,セキュリティの脅威が低減しました。
  2. 人事異動時のデータ移行作業が不要になり,職員の負担が軽減されたとともに,USB メモリ等を使用する必要がなくなったことから,セキュリティリスクが低減しました。


  3. 図1: 本システムの全体概要図


  4. 事務ネットワーク以外の全学ネットワーク(TAINS) 上のユーザーから要望があった場合に,新たに事務ネットワークを引く必要がなくなり,課題となっていたネットワークへの二重投資が不要になりました。
  5. これまで使用していた机上の端末をそのまま利用し,仮想クライアントに接続することができるため,本システムの導入に伴い不必要な端末の買い替えを防ぐことができました。

3.2 業務システム

 業務システムの仮想化統合を行ったことにより,以下のような効果を得ることができました。
  1. これまでのように,各業務システムそれぞれでサーバーを準備する必要がなくなりました。
  2. 各業務システムそれぞれでかかっていたサーバー保守費用が一元化されました。
  3. 各業務システムの実際のリソース使用状況を確認し,それぞれの繁忙期・閑散期に応じて,リソースの割り当てを柔軟に変更することが可能となりました。

4 おわりに

 本システムの導入により,事務系職員の業務を支える情報インフラ環境が整備されました。
 仮想クライアントの導入により,一般的には相反することとされる【利便性】と【セキュリティ】の双方を両立することができたと考えます。また,増え続ける業務システムのリソースに対する投資の最適化,という効果を得ることができたと考えています。
 まずはインフラ面での最適化がなされたことから,今後は,各業務システム間のデータ連携を整備し,これまで手作業で行っていたような各業務システムを用いる担当者間での情報連携を,システム間のデータ連携として行うことにより,より業務を最適化できるだろう,と考えています。