WS ルータを用いた SuperTAINS サブネット化

素材工学研究所ネットワーク推進委員会 村松 淳司
sinc@iamp.tohoku.ac.jp / mura@iamp.tohoku.ac.jp

1 はじめに

 素材工学研究所 (以下,素材研) において,TAINS88 から SuperTAINS サブネットに移行したのは,1996年11月1日である。 この日を X day として,本稿では時間を遡って, サブネット移行のドキュメントを時間の経過とともに紹介したい。 さらに,後半にサブネット構成など具体的に記す。

2 ドキュメント「サブネット化」

2.1 黎明期

 1995年春 (約1年半前),素材研では, 素材関連の情報の提供と膨大なデータの管理を目的とし, 所内に素材研ネットワーク推進委員会 (SINC) を設置した。 この委員会は,担当教授1名以下,助教授,助手で構成され (当初), 情報提供とデータ管理の手法について検討した。 1995年夏,いわゆる WWW により情報の提供が最も適当と判断し, かつ所内の情報交換や事務連絡の徹底には,E-mail が不可欠と判断し, 全職員に E-mail address を配布した。 さらに,これら情報の流れを統括するために, それまでデータベースサーバとして使用してきた WS を転用すること, また,情報を全ての部署から提供するために各研究室,事務室等に HUB, ether card 等を配給することを決め,所の中央予算から捻出し,実行した。 また,このとき事務,図書室等重要拠点には,Mac や Windows マシンを新規購入し設置した。
 1995年秋 (約1年前),素材研のホームページが整備されると同時に, Mac や Windows の使用法について SINC メンバーが所内の全職員にマンツーマンで教授し,さらに, インターネットのサービスの使用法についても講習した。 一方で,各部署にネットワーク責任者を職員の中から推薦あるいは指名し, その人に各研究室等のホームページの立ち上げなどの面倒をみてもらうこととした。

2.2 意識高揚期

 1996年 (約10ヶ月前) に入って,Windows 95 マシンの設定方法の徹底と学生, 研究生を含む全所員のネットワークに関する知識の蓄積を図った。 一方で,新しい WS を購入し,これを web,メール等のネットワークマスタとして 位置づけ,同時に新設された技術情報室に設置した。 また,所内掲示板や分析機器の予約状況などをホームページに掲載し, 所内での情報をネットワーク経由にする先鞭を付ける。
 1996年春 (約7ヶ月前),所内のネットワーク環境の保守とデータベースの 運用を任せるため,新任技官を含めて 2 名の専任技官を技術情報室に配置し, さらなるネットワーク環境の整備を行った。 同時に,積極的な ether card 経由のネットワークアクセスを宣伝し, 図書室からの案内などメールのみで行うこととした。 また,1996年秋を目指して,職員向けの「素材研広報」をホームページで のみ供給する,ペーパーレス体制の準備に入った。

2.3 サブネット化情報収集期

 1996年春 (約6ヶ月前),素材情報の提供とデータ交換の際, TAINS88 内での通信速度が極めて遅いことに気がつく。 特に電子顕微鏡画像などの画像情報の提供や交換では, 実質上現実的ではない遅さであったため,SuperTAINS サブネット化の話が出始める。 SINC の若手メンバー (助手) が中心となって, サブネット移行への予算について具体的に検討を始める。
 1996年夏 (約4ヶ月前),度重なる TAINS88 の不具合にしびれを切らし, 来年度を待たずに今年度中にしかも特別の予算を組まなくて, SuperTAINS サブネットに移行する方法を模索しはじめる。 丁度その折り,農学部で格安ルータでサブネット化した,という情報を得, 関係者から情報を集める。 一方で他の研究所でサブネット化をめざすグループと密接に連絡を取り合い, かつ工学部化学系の関係者とも連絡を取り合う。 また,素材研のインハウスは生協にもつながっており, 生協も同時にサブネットに移行できるかどうか内々に打診する。

2.4 サブネット化準備期

 1996年9月 (2ヶ月前)。 所長ら複数の教授と個別に接触し,SuperTAINS サブネット化の意義について具体的に討議する。 一方,WS ルータが最も早道と判断し,関係業者に接触しはじめる。 さらに,その業者から見積もりを出してもらい,SINC 担当教授と討議し, SINC としてゴーサインが出る。 さらに,所長と各研究室のネットワーク担当者など関係者と全体会議を開き, 所としてサブネット化推進の御旗を掲げる。
 1996年10月 (1ヶ月前)。 運用センターと連絡を取り合う。 生協の担当者とも連絡と取り合い,サブネットの構成についてかなり細部まで詰める。 業者から出された,ルータとして用いる WS と SuperTAINS サブネットの申請書をメールで運用センターに送付。 チェックの後,IP address などを発給してもらう。 一方,データベースサーバの CDDI 接続申請をも行った。 10月中旬,工事期日を決め,各研究室等のネットワーク担当者に連絡する。
 そして,X day。

3 サブネット移行の実際

 サブネット化工事は,SINC と各研究室等のネットワーク担当者が行った。 ルーターとなる WS は業者によってすでに設定済みであった。 工事計画は,事前にホームページ等で広報し,当日の段取りと役割分担を徹底させた。 そのため,工事は 3 時間程度で終了した。

3.1 サブネット化工事

3.1.1 工事の基本姿勢 :

  1. イエローケーブルを活用する
  2. 1 号館を 2 つのサブネット
  3. 2,3 号館は 1 つのサブネットにし,後日工事を行う
  4. 生協は 1 つのサブネット
  5. 事務,図書検索は TAINS88 に残す
  6. 図書の新規 WS,Mac はサブネット内

3.1.2 必要な機器類・ケーブル:

  1. ルータ(WS)
  2. CDDI ボード
  3. イーサーボード (必要サブネット数 ダブルのもの 2 つ)
  4. UTP5 ケーブル (200m程度)
  5. RJ45 コネクタ(数十個)
  6. イエローケーブルの N 型終端抵抗 + 接続プラグ (切断箇所×2)
  7. タップトランシーバ (数個)
  8. ハブ (数個)
    ただし,これは古い CS を撤去したとき,生まれる。
  9. 10BASE-5 ケーブル (コネクタ付き) (必要個)
    ただし,これは古い CS を撤去したとき,生まれる。
  10. ハンダ
  11. 電気コード (ハブ用)
  12. ねじりっこ (配線まとめ用)

3.1.3 工事手順:

  1. 素材研のネットワークマスタ WS のシャットダウン。
    ダウン後,CDDI ドライバなどの立ち上げと各種設定変更。 DNS 設定変更などの操作。
  2. LIU と 1 号館系イエローケーブル間の切断
  3. LIU と事務・図書検索,2,3 号館系イエローケーブルの新規配線
  4. 1 号館系イエローケーブルの切断 (2箇所)
    2 サブネット化,事務・2・3号館系の遮断
    (糸のこ使用)
  5. 切断したイエローケーブルに終端抵抗を接合
  6. ルータとなる WS への SuperTAINS CDDI 配線 (UTP5 特殊クロス)
  7. 素材研のネットワークマスタ WS への SuperTAINS CDDI 配線 (UTP5 特殊クロス)
  8. ルータからの各サブネットへの配線 (UTP5ストレート)
    上記,配線にはルータから1号館サブネット qe0 系への配線をのぞいて, すべて SuperTAINS MJ を使用あるいは転用した。
  9. 素材研のネットワークマスタ WS の立ち上げ。メール受信を開始。
  10. LIU 電源 ON。
    これで,事務・図書系,2,3 号館が TAINS88 に接続。
  11. 各サブネットのネームサーバの立ち上げ。
  12. サーバの設定確認作業など。

3.1.4 ルータからの配線 (通常のツイストペアケーブルで配線)

 UTP5 の RJ45 コネクタへの結線は,通常ストレート配線であり, できるだけ特性のよい線を使用することが必要。 また,コネクタへの結線では,被覆部を多くしてやる方がいい。

3.1.5 FDDI/CDDI コンセントレーターからの配線

 ところが,コンセントレーターと CDDI ボード間は,特殊クロス配線である (*1)。 同じ UTP 5 ケーブルを買ってきて,自分で細工しなければならない。 つまり,1 と 7,2 と 8 をクロスさせるわけである。 ちなみに,CDDIでは,1,2,7,8 以外の 4 本は使用していない。

3.1.6 イエローケーブル切断と終端抵抗

 イエローケーブル切断は,糸のこと電機グランダーで行った。 あっさりと切れたあと,ここにN型終端コネクタをつけた。 ハンダをする必要があるが, アンテナ工事などをした人にとっては簡単なのかもしれない。

3.1.7 トランシーバ移設

 これも初期の NEC ブランドのハードなものについては,取り外しは楽である。 最近のものは「人参」があると比較的楽に取り外すことが可能であった。

3.2 サブネット構成

3.2.1 サブネット構成の基本的考え方

 素材研は,1,2,3 号館と事務棟からなる。 それぞれは道路を隔てて独立に建っている。 一方,事務と図書はイメージメールなど TAINS88 に残す必要があった。 そこで,事務と図書のみ TAINS88 に残し,あとは SuperTAINS サブネットに移行することとした。
 つまり,130.34.30.x 系は残し,新たな SuperTAINS サブネット組は 130.34.31.x 系になる。 とすれば,サブネットは 4 つくれることとなる。 そこで,1 つは生協に当てるとして残りを以下のように,5 研究室毎に 1 サブネットとした。
┌───────┬───────────┐
│       │1号館 2号館 3号館│
├───────┼───────────┤
│研究室数   │ 10    3    2 │
│サブネット割当│  2    1     │
└───────┴───────────┘
 なお,将来的には,事務,図書ともに SuperTAINS に移行し,130.34.30.x を使用させて頂ければ,今の 1 サブネットが 2 つに増殖できる。
 道路越え工事は素人には難しいなど,ハード的な問題点があったため, 今回の工事では 1 号館のみ先行させ, 2,3 号館はハードルータの購入を待つことにした。

3.2.2 IPアドレスなどの割り振り

┌─────────┬───────────────────────┐
|         |Network        ドメイン名       │
├─────────┼───────────────────────┤
│1号館1階+2階西│130.34.31.0/26     refng.iamp.tohoku.ac.jp│
│1号館2階東+3階│130.34.31.64/26    anls.iamp.tohoku.ac.jp │
│2,3号館    │130.34.31.128/26    cntl.iamp.tohoku.ac.jp │
│生協       │130.34.31.192/26               │
└─────────┴───────────────────────┘
 * subnetmask = 255.255.255.192

3.2.3 サブネット構成

 ルータに使用したのは,SPARCclassic + TPDDI (Interphase S/FDDI 4611 SunBird) であり,これに 4 つの 10-BASE-T 端子がついている。 これらをイエローケーブルと SuperTAINS の MJ を利用して各サブネットにつないだ。

3.2.4 Name Server の構成

 素材研のネットワークマスタである,ibis は CDDI ボードをのせ, SuperTAINS につなぎ,これを Primary name server とした。 さらに,各 subnet 内に WS によるネームサーバを設置し,そこで, 正引き・逆引きを行わせている。

4 おわりに

 以上,素材研の SuperTAINS サブネット移行の経緯について説明した。 サブネット化に移行するために最も必要なことは, 研究環境の整備のためには骨を惜しまないことを肝に銘じることと思う。
 工事は教職員,学生により行われたため,総支出額は70万円程度であった。 なお,素材研工事記録は,学内のアクセスに限って提供している。
URL: http://www.iamp.tohoku.ac.jp/institute/subnet/kouji.html

[注釈]
*1 通常,クロスは,2-6 + 1-3 であるが,ここでは違うので, 市販のクロスケーブルを買ってはならない。


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