東北大学のキャンパスネットワークにおける 「TAINS利用研究会」の活動

工学研究科(*1) 仁科 辰夫
nishina@est.che.tohoku.ac.jp
素材工学研究所 村松 淳司
mura@iamp.tohoku.ac.jp
総合情報システム運用センター 曽根 秀昭
sone@tains.tohoku.ac.jp

1 はじめに

 東北大学では,1988年に全国に先駆けて,全学的なキャンパスネットワークの TAINS (総合情報ネットワークシステム,Tohoku University Academic / All-round / Advanced Information Network System,テインズ) [1] を構築し(この部分は,いまではTAINS88と呼ばれている。), 1995年に超高速キャンパスネットワークSuperTAINS [2] の運用を開始した。 この先端的な情報環境が活用され成功しているのは, TAINS利用研究会による利用技術の研究開発と教育啓蒙に依るところが大きい。 本稿では,その活動について述べる。

2 TAINS利用研究会の構成

2.1 TAINSの組織

 東北大学では1996年4月に,総合情報システム運用センター(以下,センター) を発足させた。 組織を図1に示す。 センターはネットワークの運用管理業務と運用・利用技術の研究開発を行い, 高度情報化に伴う学内の諸問題の解決に中心的な役割をはたしている。 その運営委員会に技術専門委員会と広報専門委員会が置かれ, TAINSのネットワークや情報サービスの運用等について, 専門家が参加する体制となっている。 技術専門委員会の下にTAINS利用研究会があり, TAINSの利用に関して深い経験と熱意のある有志が集い, この集団がネットワーク利用に関する調査と技術開発や自主的ルールによる 試験運用などを通して,全学的な貴重な財産であるTAINSを 有効活用するための検討を分担している。
 TAINS利用研究会が研究開発した利用技術は,センターが発行する「SuperTAINS ニュース」に掲載して,あるいは,ガイドブックを東北大学生協から発売して 学内に広報される。 ほかに,ネットワーク上のWWWやTAINS利用研究会が開催する講習会を通じても 広報される。 試験運用などにより技術的問題を整理して作成した利用技術に関するルールは, これを原案として技術専門委員会と運営委員会で審議して, 規則として制定されている。


図 1: 東北大学総合情報システム運用センターの組織

2.2 TAINS利用研究会の沿革

 TAINS利用研究会の起源は,1988年にTAINSが運用を開始したときに, 東北大学総合情報ネットワークシステム運営委員会の下部検討組織として, 利用推進のための検討と研究のために設置されたTAINS利用研究会 (ターミナルサーバ等を担当)とUnix研究会(TCP/IP通信等を担当)である。 のちに,DECnet研究会(1989年6月),Internet研究会(1991年10月), AppleTalk研究会(1990年)が設置された。
 当時のTAINS利用研究会は,利用者側を代表するボランティア11名により組織され, ネットワークを利用するためのマニュアル作成と研究開発テーマに取り組んだ。 マニュアルはTAINSへの取り付け方法から各種アプリケーションサービスの 手引きまでを含むものであり,学内に配布されたほか, 内容をより充実させて随時改訂したものを学生にも届けるために, 東北大生協から発売された。 これらのマニュアルは,ネットワーク利用が始まった全国の大学でも おおいに参考にされた。 研究開発テーマにはTCP/IPサブネット構築やSMTPによるメール配送の実験などが 含まれ,利用技術の基礎となった。 また,このときに開発されたTAINS用電子掲示版システムBBMSは, 学内の情報交換の場として今日も広く利用されている。
 SuperTAINSの計画を推進した技術運用検討小委員会(1994年7月)は UNIX 研究会と Internet 研究会のメンバーが中心となり,これが技術と広報の専門委員会 (1995年1月)へと引き継がれた。 研究会は1995年4月に,UNIX研究会,次世代ネットワーク研究会(新規,ATM担当), TAINS利用研究会,および知的財産権研究会(新規)の4つに再編された。 1996年4月に発足した新しいセンターでは,全分野をカバーする単一の TAINS利用研究会が置かれ, その中に分野ごとのグループを臨機応変につくることとなった。 各グループの幹事(教官,院生)がTAINS利用研究会の「会員」として 公式に委嘱を受けて,そのほかのメンバーとともに活動している。 興味ある人は誰でも,各グループに申し出れば参加できる。 全体の会合をほぼ毎月催し,その他に必要に応じてグループごとに集まっている。 また,それぞれのグループと全体に,打合せや議論のため, および対外的な受付窓口などのメーリングリストがある。

2.3 TAINS利用研究会のグループ

 TAINS利用研究会では,グループをつくりそれぞれが興味を持った分野を 研究してネットワーク利用技術の開発や自主的ルールによる試験運用を行っている。 現在は以下のグループ(ABC順)がある。

ATMグループ

 ATMの利用技術は不明の部分が多いので,実際にATM接続した機器を運用して 評価しながら,効果的な利用方法を検討している。

AppleTalkグループ

 TAINSにおけるAppleTalkプロトコルやMacintoshの利用技術を研究している。 Macintoshを使い始めた初心者でもネットワーク環境をより活用できるように 「MacintoshでTAINS自由自在」を執筆編集して生協から発売し, 最新の情報を盛り込むため随時改訂作業を行なっている。 また,SuperTAINS上でのAppleTalkの利用について,AppleTalkの情報をTCP/IPで カプセル化する運用方法を確立し,その運用管理ルールを作成した。

Cacheグループ

 近年のInternetの普及に伴い,ネットワークのトラヒックの増加と, レスポンスタイムの低下が大きな問題となっており, 今後もこの傾向は続くものと予想される。 その対策として有望視されているCache hierarchy(階層型キャッシュ)は, ネットワーク上に存在する複数のキャッシュサーバを階層的に接続し, 相互にデータの交換を行うシステムである。 現在のところ有力な候補であるsquidを用いて,学内で運用されているcache サーバを統合し,効率的な運用体制のための実験を行っている。

CSグループ

 全学に新規に配置されたコミュニケーションサーバ(CS)の利用技術の研究や, 利用方法のドキュメントの整備をしている。 特別なネットワークの知識を持たない人にも簡単に利用してもらうための簡易編や, ワークステーションのプリンタサーバとして利用するためのより進んだ応用編などを 書いている。

FTPグループ

 ソフトウェアのアーカイブ等を提供するanonymous FTPの運用をしている。 海外のサーバのミラー(遠いサーバの内容をコピーして近くの利用者に提供する仕組) や,東北大独自で収集したソフトウェア等を提供している。

IPグループ

 TCP/IP 通信の全般的な問題や,マルチキャスト通信の運用方法などを検討している。

講習会グループ

 各キャンパスで TAINS 利用講習会を開いている。 講師陣はAppleTalkグループとMS-Networkグループから来てもらい, MacintoshとWindowsのネットワーク利用について講習した。 その他,初歩的なものから高度なものまで相談に応じている。

MS-Networkグループ

 Windows95/NTを用いたネットワークについて, より快適に利用できるよう研究している。 以前TAINS88幹線においては, MS-Networkによるファイル・プリンタ共有は禁止としていたが, 現在ではWINSサーバ参照を含めたいくつかの設定をすることにより, 利用可能となっている。 マシンがサブネットにあっても, WINSサーバを参照することによりルータを越えた共有が可能となる。

Newsグループ

 Netnewsサービスの管理・運営をしている。 Netnewsの性格上,他の近隣ニュース・サイトの管理者とも協力し, Netnewsの配送が安定して行われるよう技術的サポートを行っている。

Solarisグループ

 Solaris2.Xにおけるサービスについて研究している。 これまでanonymous FTPやWWWサーバなどのTAINSの主なサービスは SunOS4.Xで運用されてきた。 しかし,ディスクパーテョションの容量制限や固定長サブネットマスクしか 使えないという制約が充実の妨げになってきたので,次世代のサービスのため, 安定してきたと言われるSolaris2.Xによるサービスの運用技術を研究している。 anonymous FTPのサービスを実験的に始め,WWFSの運用についても研究している。

知的財産権グループ

 TAINSの利用・運用における知的財産権を含めて, インターネットにおける法律問題について, 機動的・流動的に集まり調査・研究を行なう。

3 AppleTalkグループの活動

 1989年末にAppleTalk研究会の前身であるAppleTalk勉強会が 当時通研におられた布川先生(現宮城教育大学)の提唱で立ち上がり, 1990年にAppleTalk研究会へと発展し,TAINS88上でのAppleTalkの利用が始まった。 当時のAppleTalkはPhase1と呼ばれるシングルゾーンの規格と Phase2と呼ばれるマルチゾーンの規格のものがあり,Phase1に対する考慮から, ネットワークナンバー1本のシングルゾーンを基幹FDDIループに対して設定し, LocalTalk等のネットワークをルータを介してサブネットとして接続する 運用形態であった。 当時はネットワーク機器の値段はまだ高価であり, ネットワークの利用に関しては黎明期であったため専門的な知識と経験を有する人が 少なく,TAINS88を流れるAppleTalkは微々たるものであった。 AppleTalk研究会の幹事をしておられた布川先生が転出された後は, その活動がほとんど停止した状態になった(低迷期)。 その間のIPを用いた利用技術の進歩はすさまじく,ネットワークといえば IPしかないような印象が一般ユーザやネットワーク管理者にも 浸透していくことになり,AppleTalkに対する誤った認識が蔓延していった。
 イーサネットカードの低価格化に伴い徐々にTAINS88の利用者が増加し, AppleTalkの利用者も増加していった。 当時のAppleTalk研究会は職員幹事の不在が続いたため, AppleTalkに詳しい一人の学生にTAINS88上でのAppleTalkのゾーン管理等の負担が 集中し,またその管理や利用申請の方法が不明な状態が続いていた。 このため,TAINS88上のAppleTalkの利用に興味をもち始めた利用者が勝手に AppleTalkルータを立ち上げ,TAINS88上のAppleTalkを混乱させるという事件が 増えつつあったが,その事件をきっかけにAppleTalkルータの管理者が AppleTalk研究会に参加するようになり, その輪が少しずつ広がっていくようになった(胎動期)。 当時はAppleTalkプロトコルやAppleTalkルータの動作に関する勉強会を開催し, 知識の習得に努め,基礎を固めつつあった時期であったが, 一時はTAINS利用研究会からその存在を忘れられていたAppleTalk研究会が 活発な活動を始めるようになり,再認識されてTAINS利用研究会 AppleTalkグループ(通称,林檎組)として正式に活動を始めたのである。 この時期の勉強会による知識の共有化が,その後の林檎組の活躍の礎になっている。
 1994年ごろからイーサネットカードの値段も安くなり,イーサネットポートが 標準で付属しているものも出現し,AppelTalk機器の接続数が急激に増加を始めた。 そのため,ネットワークナンバー1本のシングルゾーンではまともに 通信できない状態になったため,1995年8月11日にTAINS88での Network Rangeの変更(革命)を決行した。 革命の日程や協力依頼については,TAINSの広報誌であるSuperTAINSニュースを利用し, あわせてMacintosh等のAppleTalk機器のTAINSへの接続方法や自主ルール, ネットワークを利用する為のソフトの使用方法などの解説記事も掲載し, AppleTalk特集号として SuperTAINSニュース No.4 を発行した(図2)。 このような広報にもかかわらず,革命はすんなりとは進まず, 革命が完結するにはほぼ一日を要した。 しかし,このSuperTAINSニュースAppleTalk特集号の発刊は, TAINSにおける林檎組の活動とそのアクティビティの高さ, ならびにTAINS上でのAppleTalkの利用法に関して学内にアピールする恰好の場となり, 革命以前は100台程であったAppleTalk機器が革命後の一年間で爆発的に増加し, 1000台ほどのAppleTalk機器がTAINS88に接続されるようになった。 また,TAINS88上のゾーン情報の混乱を防止するために, ワークステーション2台を運用して,UARを用いたseed情報の安定化をはかった。


図 2: AppleTalk特集号のロゴ

 利用者が増えると設定ミスなどによるトラブルが起こる。 実際,MacintoshによるIPアドレス乗っ取り事件が頻発するようになったのは, TAINS88への接続数が爆発的に増加した革命後である。 ネットワークは確かに便利なものであるが,他人への迷惑は慎まなければならない。 便利なネットワークを共有するためにいくつかの約束ごとがあるが, あまりに急激に増加したため,この約束ごとを知らない方々が増えてきたようである。 このようなトラブルを防止し, 安心して便利なネットワークを利用していただくために, 「MacintoshでTAINS自由自在第三版」(通称,犬本)を執筆・編集し, 1996年10月に大学生協から発売した。 本書は,第二版(1991年発行)をほとんど全て書き換え, 大幅な改訂を加えて現状に即したものにし, AppleTalkの利用に関する広報と啓蒙をはかったものである。 400部が極短期間で売り切れ,現在も改訂を加え, 第三刷としての発行準備を進めている。
 革命を成功させた林檎組が次に立ち向かうべき新たな利用技術は, 1995年に完成したSuperTAINS上でのAppleTalkの利用技術, すなわちIP Tunnelを用いたrouting技術の開発であった。 これは,SuperTAINSの基幹部がATMスイッチを用いており, IP over ATMで運用されているため,IPしか通らないからである。 このため,管理者の中にはSuperTAINSはIP専用のネットワークであると 誤解する人もいた。 IP Tunnelの実験はTAINS88とは隔絶したSuperTAINSサブネットを構築し,そ のサブネット間で実験するしかなかったが,SuperTAINSへ移行するためのルータが 高価であるため,林檎組としてIP Tunnelの実験が可能となったのは SuperTAINSの完成後約1年経過した1996年5月になってからである。 IP Tunnelの実験自体はUARを用いて行われ,紆余曲折を経ながらも数日で終了し, UARのIPTunnelの挙動や運用技術を確立することができ,これにより, SuperTAINS上でのAppleTalkの利用に関する障害が克服され,以後 SuperTAINSへの移行に拍車がかかっていったのは言うまでもない。
 AppleTalkはとかくうるさいプロトコルだという誤解が 一般に浸透しているという点は残念であり,我々はこのような誤解を正すとともに, プロトコルの壁を超えた異機種間での相互接続とその運用技術の研究開発も 行っている。 UNIXワークステーション(capとsamba)を用いれば, UNIX上でMacintoshとWindows95機の相互接続(ファイル共有等)は簡単にできるが, MacintoshとWindows95機間で直接ファイル共有を可能とするソフトを利用した 運用技術の確立にも努め,すでに日常的に運用しているところもある。 今後はこのような異機種間でのシームレスな接続とネットワークを介した 情報の共有化が益々加速していくものと考えられる。 また,どちらかというとこれまでは端末として利用されてきたパソコンでも, ネームサーバやEmailサーバとして安定に運用できる環境が整ってきており, その設定と管理の容易さから, UNIXワークステーションを必要としていた過去とは一線を画した, 新しい時代がやってくるかもしれない。 今や,MacOS上でIP ルータが動く時代になったのである。

4 MS-Networkグループの活動

 MS-Networkグループは,比較的新しいグループであり, その設置のきっかけとなったのは,Windows 95(以下win95)の発売である。 Windows 3.1のときは,sharewareのWinsock利用のTCP/IP接続で, メールなどを行っていたが,win95発売前のβ版段階で, ファイルやプリンターの共有サービスの問題が浮上した。 数千台がつながっているTAINS88に数十台の小さなLANを念頭においたwin95マシンが 相当数接続された場合,ネットワークにいかなる影響が出るのか,という問題である。 そこで,1995年7月あたりから有志でMS-Networkに関するプロトコルの研究に入り, 11月20日(win95日本版が発売される3日前)にMS-Networkグループとして 以下のような緊急情報をセンター発行の SuperTAINSニュース 上で流した。
 パーソナルコンピュータ(PC)のネットワーク機能が急速に進化してきて, TAINSに接続される台数も急増しています。 このような状況で,Microsoft Windows95 (Win95) というシステムが発売されようとしています。
 Win95はネットワーク対応が特長ですが, 必ずしもTAINSのような大規模のネットワークで使うことをターゲットにしていません。このために,Win95を標準設定のままで使用すると TAINSを異常に混雑させてトラブルを起こすことが予想されます。
 TAINS運営委員会の下のTAINS利用研究会では MS-Networkグループが中心となり, トラブルを未然に防ぐために,TAINSの状況に適したWin95利用方法を検討しました。 その結果,本特集号で提案した設定方法で利用すれば, トラブルを可能なかぎり回避できるとの結論を得ました。 Windows95を入手された方は,必ず,掲載のとおりに設定してからPCを TAINSに接続して利用してください。 TAINSの安定運用を維持するために,みなさまのご協力をお願いいたします。
 なお,この問題はWindowsNTにも共通です。 これらのMS-NetworkをTAINSで利用する方法の研究を今後も続け, 安全で効果的な利用方法を提案していきます。 ご意見やご参加も歓迎いたします。
 問題の元は,win95でイーサカードをつけた場合, デフォルトでインストールされるNetBEUI (NetBIOS Extended User Interface), NetWare等のプロトコルである。 特にNetBEUIはIBMが開発したときは, せいぜい数十台程度が接続されたネットワークを想定したものであり, ルーティング情報を持たず, 名前解決のために多量のブロードキャストパケットを流し, TAINS88に接続している全てのマシンの動作に深刻な影響をもたらすことが懸念された。 そこで,TCP/IP以外のプロトコルを流さないように, 「ファイル・プリンタ共有の全面的禁止」を提言したわけである。 もちろん,win95を購入する人は,簡単に自分のパソコンと他人のパソコンで ファイル共有等ができることを期待しているわけであり,それを完全否定することは, 同じWindowsマシンを使うものとして身を切る思いがしたことは確かである。 しかしながら,何にもしらない初心者がデフォルト の設定のまま多数TAINS88に接続されると考えると……。
 TAINS88側にも問題はある。前述のようなプロトコルが載ったパケットを TAINS88隅々まで送ることを許しているのだ。 この問題の解決には,それから,約4ヶ月の時間が必要であった。 MS-Networkグループは,TAINSとは独立のセグメントを用意し, そこで各プロトコルの振る舞いをモニタし,ファイル・プリンタ共有を実現する, 最善の方法を模索した。 その結果,NetBIOS on TCP/IP (NBT, NetBIOS = Network Basic Input Output System) のみを利用しかつWINS(Windows Internet Naming Service)サーバを用意し, 名前解決することにより, ブロードキャストパケットを激減させることが可能になった。
 そこで,windows NT3.51 サーバ2台を用意して実験し, それらでWINSによる名前解決を行う設定をすれば, ファイル・プリンタ共有可能と判断し,1996年4月,禁止の解除に踏み切った。 ただし,ネットワークの無用なトラフィックの増加を避けるために, ファイル・プリンタ共有をしないマシンには, 引き続きTCP/IPのみの使用にとどめてもらっている。
 現在でも,NetBEUIやNetWareを流すマシンがあるが,東北大全体の Windowsマシンの実数と比較すればさほど多くないであろう。 また,全部局等が全てサブネットの中に入れば, それらのプロトコルをルータで落とすことができるので, それらのプロトコルを用いても問題はないし,むしろNBTを用いれば, サブネットを越えてファイル・プリンタ共有が実現される。
 MS-Networkグループはこのほか,接続に関する質問に答え, ワークグループの作り方などを指導し, 一方でWindows NTによる新しいネットワーク構築のための研究を続けている。 NT 4.0が発売され,Windowsマシンの接続数は急速に増え続けており, MS-Networkグループに休む暇はないようである。

5 おわりに

 ネットワークは計算機などを互いに接続する技術面に関心が集まりがちですが, その本質は人と人とを繋ぐ有機的なコミニュケーションにある。 そのためにはハードウェアの設置のみでは不十分であり, ネットワーク利用技術の開発,運用管理の確立や, ネットワークアプリケーションの充実などが重要である。 すなわち,ユーザサイドからの積極的な提言や新技術の開発への参加, 並びに知識の共有と伝承が重要なポイントになる。 東北大学では,多くの研究者の努力により,これらの諸問題の解決がはかられ, 質的にも高いキャンパスネットワークが実現してきている。 その中心的な役割を果たしているのが, ユーザが積極的に自由参加して研究開発や自主的ルールの提案を行っている TAINS利用研究会であることが,東北大学の大きな特徴になっている。 今後とも,超高速ネットワーク向きの利用技術, アプリケーションの充実及び運用管理確立がはかられ, 東北大学における情報インフラストラクチャが益々発展,充実していくことであろう。
 最後に本稿をまとめるにあたり, 多大なご協力をいただいた理学部の杉江修君を始めとするTAINS利用研究会の皆さん, ならびに総合情報システム運用センターの皆さんに感謝したい。

参考文献

[1] 坂田真人,根元義章,野口正一: ``東北大学総合情報ネットワークシステム TAINSの構築'', 情報処理学会論文誌,31, 11 (1990) pp. 1661--1671.
[2] 曽根秀昭, 藤井章博, 根元義章: ``東北大学の超高速キャンパスネットワークシステム SuperTAINS'', 電子情報通信学会技術研究報告,IN96-25 (1996-06).
[3] SuperTAINSニュース,東北大学総合情報システム運用センター (参照 http://www.tohoku.ac.jp/TAINS/news/).

[注釈]
*1 1997年4月より山形大学工学部物質工学科。
この記事は,電子情報通信学会オフィスシステム研究会(1997年3月21日)の 講演資料(電子情報通信学会技術研究報告 OFS96-66)からの転載です。


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