「東北大学総合情報システム運用センター情報倫理に関する調査ワーキンググループ」の報告

情報倫理に関する調査ワーキンググループ
平成 10 年 1 月 29 日
 東北大学総合情報システム運用センターでは, 東北大学総合情報システム(TAINS)の 利用と運用に関する倫理的な問題を調査し,学内における倫理的な 基本ルールの取扱いについて検討することを目的として, 第4回運営委員会(平成9年4月17日)において 「情報倫理に関する調査ワーキンググループ」 を設置し, 情報倫理に関係する事例の調査,および情報倫理と規程の関係の あり方に関する調査を行ってきたが,このたび,その報告書を別紙のとおり, とりまとめた。
 報告書では,東北大学総合情報システムの利用と運用における情報倫理の 問題について,基本的な考え方,情報倫理に関する事項の素案,及び 運用問題の取扱いについて提言を行った。
 報告書は別紙,ワーキンググループ構成は以下のとおりである。

「東北大学総合情報システム運用センター
情報倫理に関する調査ワーキンググループ」
委員名簿

座長 電気通信研究所        教授  白鳥 則郎 
幹事 総合情報システム運用センター 助教授 曽根 秀昭 
   情報処理教育センター     教授  静谷 啓樹 
   法学部            助教授 芹沢 英明 
   附属図書館          助手  石垣 久四郎
   大型計算機センター      教授  牧野 正三 


情報倫理に関する調査報告

東北大学総合情報システム運用センター
情報倫理に関する調査ワーキンググループ

平成9年12月22日

1. 経緯

 平成9年4月17日開催の運営委員会において,東北大学総合情報システム (以下,TAINS)の利用と運用に関する倫理的な問題を調査し,学内における倫理的な 基本ルールの取扱いについて検討するために,情報倫理に関する 調査ワーキンググループ(以下,本WG)が設置された。
 5月28日,7月3日,9月22日,10月13日,11月11日,および12月22日に 計6回の会合をもち, 情報倫理に関係する事例の調査,および情報倫理と規程の関係の あり方に関する調査を行った。

2 基本的な考え方

 TAINS において,ネットワーク上のサービスを提供するための コンピュータなど(以下,サーバ)のネットワークへの接続とネット ワークの利用に関することは,当該部局の責任で取り扱うこととされている。 従って,総合情報システム運用センター(以下,センター)はネットワークを運用し 提供する立場に立ち,ネットワークに接続されたサーバの利用の内容については 関与しないことが適当と考えられる。また,利用者がサーバを設置して 他の者に使用させる場合に,両者の間の問題は自主的な解決に委ねるのが 適当と考えられる。 従って,センターは,センターが直接管理するサーバについて,個別に 利用規程を定めるべきであるということになる。
 TAINSの運用について,利用手続(利用資格・利用方法)や 技術的条件については既に規程が定められているが,若干の問題があると言える。 すなわち,東北大学総合情報システム運用管理内規(11条,12条)に関して, 強制力(罰則)を伴う利用上の禁止事項を明確にするために,これらの条文の改正, または新たな申し合わせが必要と考えられる。これは,例えば学術研究・教育目的の 利用だけに限定するものであって,倫理規程とは異質なものである。
 情報倫理に関する規程を定めるとき, 国の法律,および既に他の学内規程等にある事項については,改めて定める 必要はないと考えられる。 強制力をもつ学内規程を新たに制定する必要性に関して, TAINS で交換される情報の内容に関する事項については,言論の自由, 通信の自由の原則があり,また,相対する見解があり未解決の 問題も多いので,現状では,これに関する規程は制定すべきでないと考えられる。 情報内容に関して強制力をもつ規程を定めることは,言論の自由に抵触する 可能性がある。 ただし,利用形態の問題,たとえば 極めて大量のメールの配布は, ネットワークやサーバの正常な運用を妨げる技術的問題である。 情報内容に立ち入ることなく,TAINSの運用に影響する 利用についてのみ技術的条件として定めて,濫用を禁止すべきである。
 以上で述べた考えから,本WGでは,本学においてTAINSの利用に関して, 強制力をもつ倫理規程を定める必要はないと判断した。 しかし,TAINSの利用者,および各部局の運用管理者に対して, TAINSにおける情報倫理の考え方の基本を示すことは, TAINSの円滑な運用のために有意義であると考えられる。 これは,強制力を伴わない精神規定である。その対象となる事項について,素案を 次節に示す。ただし,これは本WGの報告として示すものであって,規程案ではない。 規程の制定に当っては,改めて専門的な委員会において検討すべきである。
 次節で示すような事項が制定された場合に,その考え方をTAINSの利用者や 学生等へ周知させることが重要である。センターはそのための啓蒙活動を 行うべきである。 また,学生に対しては,全学的な教育の中で情報倫理について触れることも 必要であると考えられる。

3 情報倫理に関する事項の素案

  1. 言論の自由
    1.1 原則として,TAINSの利用は自由である。
    1.2 言論の自由,学問の自由,他人の通信の秘密を侵害してはならない。
    1.3 プライバシー,個人情報の保護を尊重しなければならない。
  2. 法令,規定の遵守
    2.1 他人の知的財産権を侵害してはならない。
    2.2 名誉毀損を行ってはならない。
    2.3 わいせつ罪に該当する通信行為をしてはならない。
    2.4 この他の法令に違反する通信を行ってはならない。
    2.5 学術研究および教育を目的とした利用に限る。 営利を目的としてはならない。
    2.6 運用管理規程や技術的条件等を遵守しなければならない。
  3. 運用妨害
    3.1 各ネットワーク及びサーバを管理する者 から利用状況の報告又は動作試験の協力を求められたときは, これに応じなければならない。
    3.2 情報システムの変更その他の事由により,利用者のネットワーク機器の 改修又は更新が必要となった場合は,利用者の責任で行うものとする。
    3.3 ネットワークやコンピュータにとって有害なプログラム,あるいは 有害なデータにより,相手に損害を与えてはならない。
  4. セキュリティ
    4.1 他人の資格で不正アクセスをし,あるいはサーバの利用資格を貸借 してはならない。
    4.2 虚偽の通信を行ってはならない。
    4.3 メール,ファイルなど,他人の情報へ不正にアクセスしてはならない。
    4.4 正当な理由なく,ネットワーク上の通信をモニタして 他人の情報へアクセスしてはならない。
    4.5 サーバの管理者は,利用者の通信の秘密を侵害してはならない。
  5. その他
    5.1 社会慣行を尊重する。
    5.2 ネットワーク利用のマナー(ネチケット)を理解し,これを尊重する。

4 運用問題の取扱いについて

 本学のTAINSの運用に関して, 利用資格や手続きについては,規程で定められている。 また,TAINSの利用技術及び運用管理に関する技術的問題は, 技術専門委員会において取扱い,この委員会が 技術的観点から判断している。
 個々の利用については,各部局の運用管理者が扱うのが 原則である。運用上の問題については,前節で示したような事項が制定されれば 各部局の判断の基準になるが,他部局に影響するとか,未解決の問題であるなどの 理由で,部局単独では処理しきれない困難な問題 もあると予想される。 それらの運用上の問題を専門的に扱うために, TAINSの運用に関する事項を調査審議する 専門委員会を設置することが適当であると考えられる。

付録
東北大学総合情報システム運用管理内規(11条,12条)

(利用者の責務)
第11条 利用者は,情報システムの円滑な運用を妨げないよう,良識をもって利用し なければならない。
2 利用者は,センター長,運用管理者又は運用担当者から利用状況の報告又は動作 試験の協力を求められたときは,これに応じなければならない。
3 情報システムの変更その他の事由により,利用者のネットワーク機器の改修又は 更新が必要となった場合は,利用者の責任で行うものとする。

(利用の取消し及び制限)
第12条 センター長は,利用者がこの内規及び委員会が別に定める事項等に違反した ときは,当該部局の運用管理者と協議の上,その利用を取消し,又は制限すること ができる。


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