研究開発用ギガビットネットワーク通信回線の利用について

通信・放送機構 ギガビットセンター
jgnhelp@shiba.tao.go.jp
URL: http://www.shiba.tao.go.jp/JGN/
編注: この記事は,SuperTAINS から利用可能になっているギガビットネットワーク について紹介していただくために,通信・放送機構に寄稿をお願いしたもの です。

1 はじめに

 近年,コンピュータネットワークの発展と社会への浸透に伴い通信量が爆発的に増加 した結果,スループットの低下が深刻な問題となりつつあります。この問題の抜本的 な解決には,回線容量を大幅に拡充し,ギガビットクラス以上とすることが必須です。 このような背景の下に,米国では,NGI (Next Generation Internet) やInternet2 において超高速ネットワークの研究が進められており,ギガビットクラスのネットワー クの利用技術及び運用制御技術の開発が行われています。
 通信・放送機構(以下,「TAO」といいます)では,21世紀における超高速ネット ワークの実現に向け,超高速ネットワーク技術や高度アプリケーション技術をはじめ とする研究開発のための施設として,「研究開発用ギガビットネットワーク」(英語 名: Japan Gigabit Network (JGN)) を整備し,平成11年度から平成15年度までの5年 間運用します。
 この「研究開発用ギガビットネットワーク」は,全国10ヶ所のATM(Asynchronous Transfer Mode:非同期転送モード)交換設備及び35ヶ所の接続装置を超高速光ファイ バで結んだネットワーク(以下,「ギガビットネットワーク通信回線」といいます), 全国5ヶ所の「共同利用型研究開発施設」及び「リサーチセンター」から下図のように 構成されます。


図 1: 研究開発用ギガビットネットワーク(イメージ図)

 ギガビットネットワーク通信回線及び共同利用型研究開発施設は,研究開発用として, 大学,研究機関,行政機関,地方自治体,企業などに広く開放します。
 研究開発用ギガビットネットワークは,単なる高速な通信手段の提供を目的とするも のではなく,超高速ネットワーク技術研究開発の世界的中枢となることを目指してい ます。また超高速ネットワークを中心とした高度アプリケーション技術等,通信・放 送技術の水準向上に寄与する研究開発の施設として位置付けられます。
 さらに,利用者を限定しないオープンなネットワークとして,産学官連携によるネッ トワーク高度利用のための研究体制の確立や社会基盤としての超高速ネットワーク整 備の促進を目指しています。

2 研究開発用ギガビットネットワーク通信回線の基本的な運営方針

(1) 利用者
 ギガビットネットワーク通信回線は,研究開発のためであれば原則として誰もが利用 できます。ただし,利用のためには,TAOと共同研究契約を結ぶことが必要です。
(2) 利用方法
 TAOが全国に設置したアクセスポイント (ATM交換設備,接続装置)でギガビッ トネットワーク通信回線に接続し,共同研究契約において定められた研究者に利用し ていただきます。通信できる内容は,共同研究契約の範囲内に限られます。共同研究 契約を結んでいない組織がギガビットネットワーク通信回線を利用することがないよ うに,ギガビットネットワーク通信回線側では送信元や送信先のアドレスによる利用 の制限を実施します。
(3) 費用負担
 ギガビットネットワーク通信回線の利用は無料です。ただし,全国のアクセスポイン トと利用者側に設置された機器とを接続する必要があり,そのために必要な回線(以 下「足回り回線」といいます)等の費用は,利用者の負担となります。
(4) 遵守事項等
 ギガビットネットワーク通信回線の利用にあたっては,「ギガビットネットワーク通 信回線利用規約」を遵守していただきます。

3 利用可能なサービス

 ギガビットネットワーク通信回線は,ATM技術を利用した通信回線 (以下,「ATM 回線」といいます) 及び通信機器類を使って実現されています(図2)。各アクセス ポイントには,ATM回線の接続装置を設置しており,さらに IP サービスのために IP ルータを用意しています。
 利用者は,足回り回線として,ギガビットネットワーク通信回線のアクセスポイント までの回線を用意し,それをATM回線の接続装置に繋ぐことで,ギガビットネット ワーク通信回線に (物理的に) 接続することができます。東北大学大型計算機セン ターにも接続装置が設置され,アクセスポイントになっています。全体のネットワー ク構成,及びアクセスポイントの場所については,TAOのホームページを参照願い ます。

http://www.shiba.tao.go.jp/JGN/

 足回り回線を接続した後,ネットワークの (論理的な) 設定が完了すると,ATM サービスあるいは IP サービスを利用して研究を開始することができます。


図 2: ギガビットネットワーク通信回線

3.1 ATMサービス

 ATMサービスでは,利用開始の際に PVC(Permanent Virtual Channel:相手先固定 回線)を使った基本的な帯域の割当てを行います(表1,表2)。この基本的な帯域 の割当ては UBR (Unspecified Bit Rate Seice:固定的な伝送速度の保証が行われ ない割当て) であり,伝送容量に余裕のある範囲内で,自由に帯域を利用することが できます。
 研究の内容によっては,利用者の希望に応じて PVP(Permanent Virtual Path:相手先 固定経路) の割当てを行う場合があります。また,CBR (Constant Bit Rate Service: 固定的な伝送速度を設定した帯域の割当て) への変更を希望する場合は,別途ネット ワーク設定変更の手続を行ってください。
 ただし,CBRへの変更やPVPの割当て等は,ギガビットネットワーク通信回線の利用状 況によって,利用できる期間,帯域,区間等に制限を受ける場合があります。

表1: ATMサービス (PVC)
───────────────┬────────────────────────
      項目       │           内容
───────────────┼────────────────────────
利用単位           │VC単位
コネクション形態       │ポイント・ポイント接続
VPI/VCI 範囲         │VPI=0-31 (*1), VCI=32-511
               │VPI/VCIは,この範囲内でTAOが決定する。
QoS              │CBR,UBR
物理インタフェース速度 (bit/s)│622M,155M,45M,6M,1.5M 
提供速度           │(表2)
───────────────┴────────────────────────
* VC: Virtual Channel 仮想チャネル
  VPI: Virtual Path Identifier 仮想パス識別子
  VCI: Virtual Channel Identifier 仮想チャネル識別子

表2: PVCサービスの提供速度
────┬───────────────┬────────────────────────
QoS     │物理インタフェース速度 (bit/s)│提供速度(*2)(PCR規定値)(bps)
────┼───────────────┼────────────────────────
CBR     │622M             │1-540Mまで1M単位
        │155M             │0.5M,1-135Mまで1M単位
        │45M              │0.5M,1-40Mまで1M単位
        │6M              │3M,4.5M,6M
        │1.5M             │192k,256k,384k,512k,768k,1M,1.5M
────┼───────────────┼────────────────────────
UBR(*3) │622M             │1-540Mまで1M単位
        │155M             │ 0.5M,1-135Mまで1M単位
        │45M              │ 0.5M,1-40Mまで1M単位
        │6M              │ 3M,4.5M,6M
        │1.5M             │ 192k,256k,384k,512k,768k,1M,1.5M
────┴───────────────┴────────────────────────

* QoS: Quality of Service サービス品質
  PCR: Peak Cell Rate 最大セル転送速度

3.2 IP サービス

 利用者は,ギガビットネットワーク通信回線上で,インターネットプロトコル(IP) による通信サービスを利用することができます。通信できる範囲は,送信元や送信先 のアドレスにより制限を受けます。通信品質はベストエフォート型であり,品質保証 はありません。


(*1) 1.5M,6M物理インタフェースの場合は,VPI=0-3,VCI=32-255まで
(*2) 提供速度は上り,下りとも同一速度
(*3) PCR規定なしでの設定も可能

4 利用手続

(1) 申請書類
 利用に当たっては,研究計画書,及び接続申込書を提出していただく必要があります。 手続に必要な書類等については表3のとおりです。

表3: 手続に必要な書類等
──────┬────────┬────────┬───────┬─────────
  名称  │   目的   │   時期   │  提出者  │   備考
──────┼────────┼────────┼───────┼─────────
研究計画書 │研究内容と参加 │新規研究の申込時│研究代表者  │接続先組織と参
      │メンバーを明確化│        │       │加メンバー記入
──────┼────────┼────────┼───────┼─────────
接続申込書 │物理的な回線の │新規接続申込時 │機関等の長  │接続担当者を指名
(新規/変更) │新規設置や変更 │及び変更申込時 │または責任者 │
──────┼────────┼────────┼───────┼─────────
ネットワーク│論理的な回線の │研究の進捗に応じ│研究代表者  │希望帯域等の詳細
設定依頼票 │新規設定や変更 │て随時     │       │
──────┴────────┴────────┴───────┴─────────
(2) 研究計画書
 研究代表者 (ギガビットネットワーク通信回線を利用して行う研究プロジェクトの責 任者) は,研究計画書を提出してください。研究計画書の内容について検討し,適当 と認めた場合は,TAOと利用者所属機関との間で共同研究契約を締結します。
 なお,複数の機関等で共同して研究を行う場合には,研究プロジェクト全体を統括す るプロジェクトリーダーと,機関等ごとの研究代表者を定め,各研究代表者がそれぞ れ研究計画書をTAOに提出してください。その場合,研究テーマ名を同一の名称と してください。

 申込みに必要な様式と記入要領は,TAOのホームページからダウンロードすること ができます。

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(3) 接続申込書
 ギガビットネットワーク通信回線への接続を希望する機関等は,接続申込書をTAO に提出してください。接続の申込者は,利用者の所属する機関等の長または責任者と します。
 なお,複数の機関等で共同して研究を行う場合には,それぞれの機関等ごとに接続申 込書を提出してください。

 申込みに必要な様式と記入要領は,TAOのホームページからダウンロードすること ができます。

http://www.shiba.tao.go.jp/JGN/

5 利用に際してのお願い

5.1 遵守事項

 利用者は,ギガビットネットワーク通信回線の利用にあたり,以下の事項を遵守して ください。
 なお,利用者がこれに違反した場合,ギガビットネットワーク通信回線の利用の承認 を取り消すことがあります。
(1) ギガビットネットワーク通信回線の利用に際し,次の行為は禁止します。
 なお,これらの行為が行われないように,利用者側で適切な措置を行って下さい。
  1. TAOとの共同研究契約に係る研究と無関係に利用する行為。
  2. 直接に営利を目的として利用する行為。
  3. 共同研究契約において定められた研究者以外の者に利用させる行為。
  4. ネットワークの運営を妨害する行為。
  5. 法令や公序良俗に反する行為。
  6. その他,TAOが不適当と認める行為。
(2) ギガビットネットワーク通信回線を介して他のネットワークを利用する際には, 当該ネットワークの利用規約も遵守して下さい。

5.2 留意事項

 ギガビットネットワーク通信回線の利用にあたり,あらかじめ次の事項にご留意くだ さい。
(1) TAOが設置する接続装置から先の利用者用設備,足回り回線等に係わる事項は, 全て利用者の責任において処理して下さい。
(2) アクセスポイントによっては,接続装置を利用する際に,当該接続装置の設置機 関との調整が別途必要な場合もあります。
(3) ギガビットネットワーク通信回線を用いた研究の過程で利用者が得た知的財産権 の帰属は,共同研究契約において定めます。
(4) TAOは,ギガビットネットワーク通信回線上での通信の品質について,保証す るものではありません。
(5) TAOは,利用者がギガビットネットワーク通信回線を利用すること,または利 用できないことにより生じた損害について,いかなる責任も負いません。

5.3 その他

(1) TAOは,研究または運営上の理由により,通信データを収集することがありま すのでご協力下さい。
(2) ギガビットネットワーク通信回線の有用性を広く世に伝え,活発な研究活動を推 進するためTAOが主催する研究発表会やシンポジウム等を通じた研究の進捗状況や 成果の報告にご協力ください。 また,ギガビットネットワーク通信回線を利用した研究に関して,利用者が報道発表, 論文発表等を行う場合には,ギガビットネットワーク通信回線を利用した旨を記載す ると共に,共同研究契約締結時にTAOからお知らせする研究プロジェクト番号を明 記してください。併せて,発表した資料や論文等の写しをTAOに寄贈ください。な お,報道発表を行う場合には,事前にTAOにお知らせください。
(3) 故障時の連絡などを電子メールで行いますので,利用者は,ギガビットネット ワーク通信回線とは別に,インターネットを利用可能な環境を準備してください。

6 応募・問い合わせ

 東北大学には,アクセスポイントが設けてありますので,ギガビットネットワークへ の接続については,有利な環境にあります。超高速のギガビットネットワークを大い に利用して,研究の向上にお役立て下さい。
 研究開発用ギガビットネットワークの利用については,TAOのホームページに利用 の手引,FAQ等を設けていますので参考にして下さい。

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 なお,問い合わせ等につきまして,下記まで連絡下さい。

〒105-0014 東京都港区芝二丁目31番19号バンザイビル
通信・放送機構  研究推進部 ギガビットセンター
	電話 03-3769-6856
	FAX  03-5418-9670
	E-mail jgnhelp@shiba.tao.go.jp


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