fmlを用いたメーリングリストの設定

大学院情報科学研究科 江原康生
eba@nemoto.ecei.tohoku.ac.jp
総合情報システム運用センター 曽根秀昭
sone@tains.tohoku.ac.jp

1 まえがき

 ここ数年の間で,インターネットの世界が日常生活において非常に身近になりました。その要因として,世界中の人達と気軽にかつ瞬時にコミュニケーションをとることができる電子メールの存在が大きいと思われます。その中で今回は,電子メールをより便利に活用する手段の一つであるメーリングリストについて取り上げ,また代表的なメーリングリストのソフトであるfmlのインストール及び設定方法について説明します。

2 メーリングリストとは?

 一般的な電子メールは一対一で行われますが,宛先の電子メールアドレスを並べて指定することで,同時に複数の人に同じメールを送ることができます。しかし,そのメールを送る人数が莫大になる場合,メールを送るアドレス全てを書くことになります。これは非常に大変な作業になるので,あまり効率的ではありません。そこで,この問題を解消するために,メーリングリストという技術が生まれ,現在,インターネットの世界では幅広く利用されています。
 メーリングリストとは,電子メールを使って特定の話題や情報を特定のユーザに送付するためのシステムです。メールアドレスを持つ複数のユーザをグループ化して一つのメールアドレスに登録することによって,共通の情報を同時配信します。メーリングリストの本体アドレス宛にメールを出すと,登録されているメンバー全員に転送されます。そのメールへの返信は本体アドレスに届きますので,これもメンバー全体に転送されるわけです。このような方法で,多人数でメールを交換していくことになります。メーリングリストのメンバーは自由にメールを出したり,届いたメールに返信を出したりできます。もちろん届いたメール全部に返事を出す必要はありません。 自分がコメントしたい発言にだけ,返信すればよいのです。
 メーリングリストの活用例としまして,以下の項目等が挙げられます。
  1. 同じ趣味あるいは興味を持つ仲間同士の情報交換
  2. 特定のテーマに関する議論や意見交換
  3. 地域交流(各地域に住んでいる人同士の交流),同窓会など
  4. 研究室や部署内におけるメンバーへの連絡
 1〜3を目的にした場合は,他の人が運営しているメーリングリストに参加することもでき,様々なMLの紹介をしているホームページ等(*1)があります。


(*1) 月間ML紹介, http://mlnews.com/jp/

3 メーリングリストの作成方法

 次に具体的なメーリングリストの作成方法について説明します。尚,本文における設定方法はUNIX(Linux,FreeBSDも含める)のOSを対象としています。Windows や Mac に関しても様々な作成方法がありますが,今回は省略させていただきます。

3.1 aliasesによる簡易な作成

 メーリングリストの作成で最も単純な方法として,メールサーバの計算機にある /etc/aliases(*2)(OSによってディレクトリが異なる場合あり) というファイルを用いる方法があります。例えば,tarepan@host1.xxx.tohoku.ac.jpというメーリングリストを作る場合,host1.xxx.tohoku.ac.jpの計算機に存在するファイル/etc/aliasesに以下の記述を加えます。  また,/etc/aliasesにメンバーのアドレスを直接書くのではなく,他のファイルにアドレスをまとめて書き,それを参照させる方法もあります。 例えば,/etc/mail-lists/tainsというファイルを作り,配送したいメンバーのアドレスを, と書いておき,/etc/aliases と記述すれば,上記と同様になります。
 このように,/etc/aliasesに新たな記述を追加,あるいは一部を削除した場合は,スーパーユーザ(root)になって, とコマンドを実行して下さい。それにより,変更したaliasesの記述内容が有効になります。


(*2) /etc/aliasesのファイルパーミッションは-rw-r--r--にしないと,メール送受信が正常に動作しない可能性があります。

3.2 fmlによるメーリングリストの作成

 3.1で示した方法よりもメンバーの自動登録やコマンドメールによる情報サービスなど様々な高度な機能を持つフリーのメーリングリスト用のソフトが様々な場所で活用されています。今回はその中の代表例であるfmlについて紹介し,その設定方法について説明します。
 fmlとは,perl言語によって開発された,メーリングリストを立ち上げるソフトです。fmlのホームページのURLはhttp://www.fml.orgです。fmlでは上で述べた機能に加え,過去の投稿メールの取り寄せなどを簡単に行うことができます。またインストールもUNIXであれば比較的容易にできるので,初めてメーリングリストを作る人にはおすすめです。次章以降でfmlのインストール方法について説明します。

4 fmlのインストール

4.1 fmlを使用するために必要なもの

 基本的にメールサーバになっている計算機で,perlがインストールされていれば問題ありません(*3)


(*3) もしperlがインストールされていなければ,必ず先にインストールをして下さい。方法は,検索エンジンなどで見つけることができます。

4.2 fmlのソースの入手及び展開

 fmlのソースは,ftp://ftp.iij.ad.jp/pub/IIJ/dist/fukachan/fml/stable/fml-3.0.1STABLE-stable-20000411.tar.gzから入手できます(最新バージョンは2000.4.12現在,3.0.1です)。ソースの展開場所はどこのディレクトリでもかまいません。gzip + tar を用いてソースを展開して下さい。

4.3 インストール

 次にインストール方法ですが,ディレクトリ内にあるINSTALL.jpというファイルを参照して行うことができます。ここでは,インストールの際の設定方法について簡単に説明します。まずディレクトリを移動して,以下のコマンドを実行します。  すると,画面に以下のメッセージが出て来て,設定についていくつか聞かれます(アンダーライン部分)。順番に設定して下さい。([]の内容がデフォルトの設定)

---NOT USING configuration file (for the first time)
   THIS HOST (host1.xxx.tohoku.ac.jp) IS [*******]
---Please Define Your Fml System Configurations
Personal Use or ML-Admin-Group-Shared or fmlserv you use?

Personal, Group, Fmlserv (personal/group/fmlserv)   [personal]

メーリングリストの管理方法を決めます。管理者(設定を行う人)は普通一人なので,personalを選択するのがよいでしょう。管理者を複数にする簡単な方法として,fml 専用アカウントを作って設定の際にはそのアカウントを使用する方法があります。

DOMAIN NAME      [host1]

ドメイン名を入力します。(例 xxx.tohoku.ac.jp)

FQDN          [host1]

Fully Qualified Domain Name(計算機のインターネット上での正式名)を示します。そのドメインのメールサーバに当たる計算機でメーリングリストを作る場合はDOMAIN NAMEと同じでもかまいません。(例host1.xxx.tohoku.ac.jp)

EXEC FILES DIRECTORY      [/usr/local/fml]

実行ファイル等のfmlシステムをインストールする場所を決めます。管理者が一人あるいは専用アカウントを使用する場合は,$(HOME)/fmlの方が良いでしょう。(注:ここでの$(HOME)は管理者あるいは専用アカウントのホームディレクトリを表します)

TOP LEVEL ML DIRECTORY       [/var/spool/ml]

各メーリングリストの設定ファイルを作るディレクトリを決めます。これも $(HOME)/fml/ml とした方が,何かと都合がよいかと思います。

Language (Japanese or English) [Japanese]

メーリングリスト用に作られるドキュメントの言語設定になります。"Japanese" を選択して下さい。

TimeZone (TZ: e.g. +0900, -0300) [+0900]

タイムゾーンの設定です。日本の場合はデフォルトのままにします。

 以上の設定が決定したら,自動的にインストールが行われます。途中,以下に示すメッセージでインストールの確認を聞かれますが,"y"と答えて下さい。

---Install the Fml system to $(HOME)/fml. (y/n) [n]

これでインストールは終了です。

5 fmlによるメーリングリスト作成方法

 fmlのインストールが完了したら,実際にメーリングリストを作ってみましょう。設定を行う際には,makefml コマンドを使います( $(HOME)/fml/makefmlにインストールされています )。

5.1 設定ファイルの作成

 例えば,Tarepanメーリングリスト(tarepan@host1.xxx.tohoku.ac.jp)を作る場合は,以下のコマンドを実行します。 これにより,$(HOME)/ml/tarepan の下に必要な設定ファイル類が作られます。各ファイルの内容は,$(HOME)/fml/doc/INSTALL.jpを参照して下さい。

5.2 /etc/aliasesの設定

 次に,3.1で述べた/etc/aliasesの設定を行います。(この場合,スーパーユーザになる必要があるので,権限のある人にお願いして下さい。) fmlの場合は,$(HOME)/ml/tarepan/aliasesの内容を,そのまま/etc/aliasesに追加すればよいです。そして,newaliasesを実行します。

5.3 メンバーの登録及び削除

 次に,メーリングリストのメンバーの登録(削除)方法について説明します.作業は,基本的には管理者が行うことになります.メーリングリストのメンバーの登録,削除についても,makefmlコマンドによって行うことができます。まず自分のメールアドレスを登録することにします。登録は,以下のコマンドを実行します。 これにより,$(HOME)/ml/tarepan/の下にactivesmembersというファイルが作成されます(activesはメールの配送先リストで,membersはメンバー認証に使うリストです)。
 では,ここでメーリングリストが正常に動作するか,テストメールを出してみましょう。メールを送信して少したってから,自分にtarepan@host1.xxx.tohoku.ac.jp宛のメールが届いたらOKです。後は,メーリングリストのメンバーのアドレスを上記のコマンドで順々に登録して下さい。
 一方,削除コマンドは,以下の通りです。 また,これらのファイル(activemembers)を手動で編集しても,メンバーの登録,削除を行うことができます。
 以上の作業で,fmlの基本的な設定は終了です。これでメーリングリストとして最低限の動作はしますが,fmlは他にも様々な機能を持っています。次に,その詳細設定方法について説明します。

5.4 fmlの詳細設定方法

 fmlにおけるメーリングリストの詳細設定は,$(HOME)/ml/tarepan/config.ph というファイルで定義されています。このファイルを手動による編集で詳細設定を変更してもよいですが,makefmlコマンド(*4)によって自動的に行うことができます。ただし,config.phを手動で変更してからmakefmlコマンドで変更を行うと,手動でconfig.phに加えた変更が上書きされてしまうことがありますので,注意してください。詳しい説明については,$(HOME)/fml/doc/INSATLL.jp を参照してみて下さい。


(*4) コマンドは,host1% makefml config tarepan

5.5 別のメーリングリストを作りたい場合

 同じ計算機上に別のメーリングリストを作りたい場合は,新たにfmlをインストールする必要はありません。5.1〜5.3で説明した作業を,メーリングリストの名前を変えて行うことによって作成できます。

6 メーリングリストの利用方法

6.1 メーリングリストへの投稿

 メーリングリストのメンバーになれば,自由に投稿することができます。投稿方法は以下に示す投稿アドレスを用いて,メールの送信を行って下さい。これにより,自分を含めたメンバー全員にこのメールが送られます。また他のメールへの返事も投稿用アドレスを用いて下さい。

To: tarepan@host1.xxx.tohoku.ac.jp ←(投稿用アドレス)
Subject: 初めて投稿します
--------
(以下内容)
・・・

6.2 コマンドメールの使い方

 fmlはその他の機能として,コマンドメールによって過去の記事を取り寄せたり,メンバーや配送の停止・脱会に関する情報を自動的に配送することができます。利用方法は,まずメーリングリストサーバに以下のアドレス(投稿用アドレスと異なります)に,本文にhelpとコマンドを書いてメールを送ります(help は,HELP でも構いません)。

To: tarepan-ctl@host1.xxx.tohoku.ac.jp ←(コマンド用アドレス)
Subject: ←(書かない)
--------
help

 これによって,コマンドメールの利用に関するヘルプ・ファイルが送られてきます。これらのコマンドを上記のメールアドレス宛に同様の方法でメールを送ることによって,コマンドが実行されます。コマンドの一覧及び説明については,ヘルプ・ファイルを参照して下さい。

7 むすび

 本文では,電子メールをより便利に活用する手段の一つであるメーリングリストについて取り上げ,また代表的なメーリングリストソフトであるfmlのインストール及び設定方法について説明しました。本文の内容が,fmlの利用に少しでもお役にたてれば幸いです。もし興味を持たれた方は,ぜひともお試し下さい。またfmlには,今回紹介しきれなった高度な機能がまだまだ多数含まれています。そちらの方もマニュアルを読んで,いろいろ試す価値はあるかと思います。

付録

 今回紹介しましたfmlの他にも,様々なメーリングリストのソフトがあります。以下のURLで紹介していますので,そちらについても試してみるのもよろしいかと思います。

ソフト名 URL
majordomo ftp://ftp.greatcircle.com/pub/majordomo/index.html
http://www.y-min.or.jp/~nob/ML/
リスト亭(製品版) http://www.piedey.co.jp/listtei/
simalis http://mirror.vector.co.jp/soft/win95/net/se045058.html


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