サーバに用意しておくメールアドレス

〜 RFC 2142 〜

総合情報システム運用センター 佐伯田鶴
saeki@tains.tohoku.ac.jp
総合情報システム運用センター 曽根秀昭
sone@tains.tohoku.ac.jp

1 はじめに

 インターネットが普及するにつれ,電子メールの利用も急激に増えています。通常は,メールアドレス(ユーザ名@ホスト名)の分かっている相手に対してメールを送ることがほとんどですが,時には,あるサーバのメールサービスについて問い合わせたい,あるいは,あるサーバから不審なアクセスがあったのでそこの担当者に問い合わせをしたい等,ホスト名やドメイン名のみしか分からない場合があります。このようなケースに備えて, ``RFC 2142'' という文書には,インターネットに接続している組織等において,(義務ではありませんが)用意しておいた方が良いとされるメールアドレスが書かれています。

 ここでは, RFC 2142 を基に,用意しておくことが望ましいメールアドレスを紹介します。

2 RFC 2142

 初めに RFC について簡単に説明します。

 インターネットの世界において,インターネットの各種プロトコルやそれに関連する事項を定義している文書が数多くあります。RFC (Request for Comments) はそのような文書の一種で,現在はIETF (Internet Engineering Task Force) という団体が取りまとめています。

 設定を推奨されているメールアドレスについては,プロトコルではありませんが,関連事項として,RFC 2142``Mailbox names for common services, roles and functions''で述べられています(http://ring.tains.tohoku.ac.jp/archives/doc/RFC/rfc2142.txt)。

 RFC 2142は ``Standards Track''(インターネット標準へ向けて標準化作業中)という位置付けにされていますので,「設定することが義務ではないが,なるべく設定しておいて下さい」という意味合いです。

3 メールアドレス

 それでは RFC 2142 の中で述べられているメールアドレスをいくつか紹介します。

 サービスに伴うもの (表1):メール,ネットニュースなどの各種サービスに対する質問や報告を受けつけるためのメールアドレスです。例えば,``postmaster@ドメイン''は,そのドメインでのメールシステムやメールアドレスの問い合わせに使われることとされています(*1)。提供しているサービスに応じて用意して下さい。


(*1) RFC 822 で定義されています。しかし,メールアドレスはプライバシー情報の1つですから,むやみに問い合わせをするのは控えて下さい。また,メールアドレスを含めた個人情報の問い合わせには応じない方針を取る所も多くあります。

表 1 : サービスに伴うメールアドレス
メールアドレスサービス
postmasterSMTP
hostmasterDNS
usenetNNTP
newsNNTP
webmasterHTTP
wwwHTTP
uucpUUCP
frpFTP

 運用一般に関するもの (表2):特定のサービスに対応するものではなく,その組織のインターネットサービスに対する苦情などに対応できるようなアドレスも必要です。最近は,セキュリティに関する問い合わせや連絡も予想されるので,abusesecurity は設定しておく方が良いでしょう。

表 2: 運用に関するメールアドレス
メールアドレス用途
abuse不適切な利用に関する連絡
securityセキュリティに関する 〃
nocネットワークインフラに関する 〃

 商用 (表3):大学等の研究機関ではあまり関係ありませんが,商用関係の組織では問い合わせのメールアドレスの用意が推奨されています。大学でも全般的な問い合わせ窓口として, info だけは有用かもしれません。

表 3: 商用関連のメールアドレス
メールアドレス用途
info組織に関する問い合わせ
marketingマーケティングに関する 〃
sales製品購入に関する 〃
support製品やサービスの問題に関する 〃

 このように統一的なアドレスを用意しておけば,何かの用件でそのドメインの管理者と連絡を取りたいときには,これらのアドレスへ連絡をすれば良いわけです。

 例えば b.a.tohoku.ac.jp というマシンが意図せずしてメールの不正中継に使われ,大量のspamメールを送付してしまった場合,余計なメールを受けとって不愉快に思った人々は,

abuse@b.a.tohoku.ac.jp (または security@b.a.tohoku.ac.jp)
abuse@a.tohoku.ac.jp
(場合によっては) abuse@tohoku.ac.jp

へ抗議のメールを送ってくることが考えられます。

 または,逆に自分が迷惑メールを受けとったときに,抗議をする相手はabuse@xxx.yyy.zzz 等となります。

 これらのメールアドレスを用意するサーバは,とくに「メールサーバ」や能力の高い「サーバ」として提供されているものに限らず,ネットワークに接続してメールサーバ機能が動いているコンピュータすべてが対象になります。部局や研究室等のドメインを代表するコンピュータでは,ほぼ 必須 ひっす と言えます。また,メールサーバ機能は動いていないが Web サーバ等の機能は動いているようなコンピュータについては,DNSの MXレコードを設定する等して,ここで述べたメールアドレスが適切に処理されるよう設定して下さい。

4 設定方法

 このようなメールアドレスを設定するには, 等の方法がありますが,1 よりも 2 の方法が一般的です。

 2の転送先の設定は,UNIXシステムでsendmailを使用する場合は,サーバの /etc/aliases, /etc/mail/aliases 等のファイルで行います(*2)


(*2) UNIXでも種類により,他のディレクトリにあることがあります。

 組織等で複数の担当者がいる場合は,担当者を列挙し,メーリングリストがあるならば,そちらへ転送するのが良いでしょう。メールアドレスの設定をしたのは良いが,そこへ来たメールをだれもチェックしないようですと意味がありませんので,ご注意下さい。セキュリティがらみの連絡が来た場合は,迅速な対処が求められる場合があります。

 ドメイン a.tohoku.ac.jp のメールを受けるメールサーバや,a 内のサブドメイン b.a.tohoku.ac.jp それぞれについて設定して下さい。

 aliases ファイルの書き方の例:

bind: root
news: root
postmaster: root
root: mike, tama@host1.xxx.tohoku.ac.jp
webmaster: www-admin@www.yyy.tohoku.ac.jp

5 おわりに

 以上,RFC 2142について簡単に説明致しました。

 最近では,spamメールや不正アクセスの連絡のために,postmasterabuse へメールを出そうとする人も多いようです。連絡を確実に受けられるよう,メールアドレスの設定を一度再確認してはいかがでしょうか。


pub-com@tains.tohoku.ac.jp