SuperTAINS デモンストレーションを終えて

大型計算機センター 藤井 章博
fujii@cc.tohoku.ac.jp
「・・・を超える」

 SuperTAINS の完成を記念して開催されたデモンストレーションの当日は, 小雪がちらつく日が数日続いた後の, 心地好い春の日ざしを感じられる一日でした。

 「・・・を超える」というテーマのもとで開催された 今回のデモンストレーション(以下デモ)の趣旨は, SuperTAINS が既存の何かを超えることができるということをできるだけ多くの人に 理解していただこうということでした。 SuperTAINS の全容を紹介する展示に加えて,高速ネットワークを利用した 最近の一番新しい事例の数々が,この趣旨に賛同して頂いた会社の協力によって 紹介されました。
 どのような内容の展示があったのかは, SuperTAINS ニュース2号に詳しく記載されております。

デモの中身

 展示は,大きく分けるとSuperTAINS の紹介,その活用への学内での取り組み, および各社の超高速ネットワーク関連技術や製品の紹介でした。
 まず,学内の取り組みとしては,大学院情報科学研究科が導入した 教育用電子計算機群を利用したいくつかのアプリケーションが ありました。
 ShowMeと呼ばれるアプリケーションは, ビデオカメラ付の端末を利用してテレビ会議を実現するもので, ネットワークが高速であればそれだけ自然な画像で通信できます。 このアプリケーションでは,端末上に現れるホワイトボードも遠隔地間で 共有できるので,会議への参加者が共通の画面に絵を描きながら共同 作業を進めることができます。 この機能を持つ端末を大型計算機センター,南青葉山工学部機械系,川内情報処理 教育センター,片平電気通信研究所の建物内に準備しました。デモの当日多くの方が, この端末の前に座って,別のキャンパスに居る人とお話しをしました。実は, デモを準備して行く中でミーティングもこれを利用し,お忙しい先生方に わざわざ大型計算機センターまで出掛けて頂かないで意見交換ができ, 実用上も大変重宝しました。

 デモ当日のハイライトの一つは,西澤潤一総長が青葉山の会場にいらした ときに,これを利用されたことでしょう。 片平の端末の前に座られた廣田史郎東北大学事務局長と南青葉山工学部機械系からの 中村維男先生,川内情報教育センターの静谷啓樹先生 を交えて談笑されました。
 次に,ShowME TVは, 高精彩な画像をネットワークを通じて配信する機能をもつものです。 当日は大学教育開放センターが収録した種々の講義ビデオを SuperTAINS 上の異なる2地点から同時に流しました。 この公開授業の模様は,情報科学研究科の計算機群から, そのいずれかを自由に選択して受信することができるものでした。 まさにSuperTAINS を利用した教育環境の変化を暗示させるものです。
 このアプリケーションを利用したときの情報の伝送速度を測定した結果 は,約70Mbpsでした。 光ファイバの伝送速度はこれより大きいのですが, 70Mbpsあれば,ハイビジョン程度の画質の動画が伝送できます。 SuperTAINS は,このようなアプリケーションをキャンパス間に渡って 幾つも動作させる能力を持っていることが分かりました。
 インターネット利用の紹介も行われました。現在SuperTAINS ,TAINS88 を含むあらゆるネットワークは,インターネットと呼ばれるいわば 「ネットワークのネットワーク」に接続されています。 そこには,映像と音声をマルチキャストという機能を通じて放送する しくみがあり,それをMBONEと呼びます。今回のデモでは,大型計算機 センター5階の大会議室会場の模様をこのMBONEを通じてインターネットに マルチキャストしました。放送中には,奈良先端科学技術大学院大学と 九州工業大学から応答が入ったり,放送を見ている遠くの仲間に,来場者が 自分の婚約者を紹介するという一幕もありました。
 附属図書館からの展示は大変目を引くものでありました。 本学の附属図書館には,狩野文庫と呼ばれる国宝を含む 江戸時代の和漢書古典本の宝庫があります。 附属図書館では,歌舞伎の名場面などの 彩色資料を電子データとして蓄積しました。 デモ会場では,このデータをWWW (World Wide Web)という ソフトウエアを利用して, 端末上に表示させました。 会場に来た方々は,コンピュータの画面に広げられた これらの秘蔵の書を熱心に見入っていました。 この取りくみは,未来のデジタルライブラリーの出現を暗示させるもの となりました。 狩野文庫のWWWに関しては,本号「SuperTAINS の利用を考える(2)」 でも取り上げています。
 情報ネットワークの研究という立場からの展示もありました。 仮想並列処理と呼ばれるもので,高速ネットワークを利用して 科学技術計算に必要な演算負荷を分散させるものです。 デモ会場では,マンデルブロ集合の描く美しい図形の計算を 実演していました。また,大規模な情報ネットワークの状態管理を 柔軟かつ容易に行えるという監視システムの実演も行われました。 これらは,大学院情報科学研究科における研究テーマでもあります。
 デモ会場では,デモの出展内容をパネルを用いて説明していました。 実は,これらのパネルはマルチメディア時代を先取りした印刷技術を用い て作成されました。 パネルの作成過程は,まず, 文字データ,写真,図,を全て計算機上で加工し,電子データとして蓄積 しました。 パネルは,これを高品位なプリンターに出力したものです。 作成したデータは,SuperTAINS ニュースの印刷にも使われましたし, WWWを通じてネットワーク上にも公開されます。

マスコミ報道

 SuperTAINS の披露に合わせて, SuperTAINS 完成のニュースが多くのマスコミを通じて 全国に広く伝えられました。
まず,新聞の方では,河北新報,日本経済新聞,毎日新聞各社が デモ開催の案内と当日の模様を伝えました。
 テレビの方では,まず,SuperTAINS 運用開始までの構築のありさまを ドキュメンタリータッチに仕上げた仙台放送の番組 「マルチメディアの扉を開くSuperTAINS 」が2月18日に放送されました。 この中では,西澤潤一総長,曽根敏夫大型計算機センター長, 根元義章大型計算機センター研究開発部長の インタビュー,東北大学加齢医学研究所の福田 寛先生の研究内容, テレビ会議システムを利用した打ち合せ風景, デモ準備のためのミーティング等の様子がカメラに納められました。 この番組は,SuperTAINS 完成前夜の熱い雰囲気を伝えるものとなりました。 さらにデモ当日,番組の中の西澤総長のインタビューは,電子データとして計算機に 蓄積され,ビデオオンデマンドで参加者がその場で観ることが出来ました。
 この他に, 宮城テレビは,当日取材に現れ,ごったがえした会場の様子と色とりどりの 計算機の画面をニュースで伝えました。

 また,東北大学の新しいネットワークの構築は,技術的な専門家の間でも 早くから話題になっておりました。これを裏付けるように,当日はネットワーク 関連の専門誌の記者が大勢訪れ取材をしていきました。 まず,オーム社の「コンピュータ&ネットワークLAN」平成7年5月号では 写真入りでデモの様子とSuperTAINS の構成をカラー写真入りで紹介し, 6月号では技術的な解説記事を掲載しました。 また,日経BP社が「日経コミュニケーション」1995年3月20日号で 紹介記事を掲載し,同社の「日経データコム」が1995年月3月号で速報 として取り上げ,4月号では,ユーザー事例の欄にくわしく紹介しました。 また,ソフトバンク社の「internet user」では, 1995年5月号のHeadline欄で デモの様子などをカラー写真入りで紹介しました。IDGコミュニケーションズの 「サンワールド」でも4ページに渡ってカラーで取り上げました。

参加した人たち

 デモの当日の二日間には,200名の招待者に加えて, 1000名を超える方々の参加がありました。
 招待者の方々の顔ぶれとしましては,まず, 木島令己文部省学術国際局学術情報課長をはじめとする文部省の方々が ご来場下さいました。木島課長が大型計算機センター5階に設置した ShowMeの端末から,南青葉山地区のデモ用端末に座っておられた先生と 熱心にお話になっている姿が印象にのこっています。
 民間企業からは,SuperTAINS の工事を請け負った日本電信電話(株)の 宮津純一郎副社長をはじめ,東北大学とネットワーク関連で協力関係にある 企業を代表する方々においで頂き,披露式典およびデモに華をそえて頂きました。
 1000名余りの余り一般の方々の参加というのは,当初の我々の予想を 大きく「超える」ものでありました。 最先端のネットワークの威力をこれだけ多く の方々に知って頂けたのは喜ばしい限りです。 皆さんマルチメディアコミュニケーションを支える技術とそのもたらす 恩恵について理解を深められたのではないかとおもいます。
 さて,このように大成功の内に幕を閉じたデモでありますが, 終えたあとの感想を一言で述べさせていただければ,「これからですよ」 という言葉がぴったりくるように思います。よく言われているように, ネットークはまず人のネットワークから始まり, その上で技術を育てていくものです。今回のデモを通じて色々な意味で その芽が生まれたのではないかと思います。 今後,TAINS広報専門委員会および技術専門委員会は,この芽が育つ手助けを しっかりやっていきたいと考えております。

むすび

 おわりに,デモ会場を提供していただき, 創立25周年記念,スーパーコンピュータの導入披露を ともに進めてきた大型計算機センターの皆様に感謝致します。 また,デモの展示にご協力くださった各社の皆様にこの場を借りて お礼申し上げたいと存じます。最後に, WG−5と命名されたグループでデモに向けて共に活動してきた皆さん, 本当に御苦労様でした。


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