WWW − 発展を続ける広域情報システム
−その概要と最新の動向−

大学院情報科学研究科 松井健一
matsui@nemoto.ecei.tohoku.ac.jp
大学院情報科学研究科 藤井章博
fujii@nemoto.ecei.tohoku.ac.jp
大学院情報科学研究科 根元義章
nemoto@nemoto.ecei.tohoku.ac.jp
1.はじめに

 昨年は「インターネット」が流行語に選ばれましたが,ここまでコンピュータ ネットワークの存在が一般に広く認知された背景には WWW(World Wide Web)の 存在が大きいように思われます。ここでは,WWWのしくみ,WWWの利用状況,WWWに おける新しい技術について見てみたいとおもいます。

2.WWWのしくみ

 WWW (World Wide Web)は1989年にCERN (Conceil Europeenne pour la Recherche Nucleaire)の Tim Berners-Lee 氏らによって提案されました。 WWWを一言で表現すると分散型広域情報システムと言えます。世界中の情報が, ネットワークを介してまるで網(Web)のように結合し,あたかも一つの大きな情 報システムを構成しているように見せるものがWWWです。

2.1 ハイパーテキスト

 では,具体的にどのようにして情報の結合を行なっているのかを見て行きます。 WWWではHTML (Hyper Text Markup Language)と呼ばれる言語を用いて情報のあ りかやそれらのつながりを記述します。HTMLはあらゆる情報を一元的に記述し 利用することを目指した言語です。
 実際にHTMLで記述したテキストをハイパーテキストと言いますが,このハイパー テキストからネットワーク上の種々の情報(画像,音声,他のハイパーテキ スト等)へのリンクを記述することが出来ます。リンクとは,関連する情報の ありかを示す``しるし''です。


図1 ハイパーテキストにおけるリンクの例

 図1はハイパーテキストでのリンクの例です。それぞれのハイパー テキスト上に作成されたリンクから,他のテキストへ移動したり,あるいは関連 する音声や画像,動画を見ることが出来る様子を示しています。
 リンクすることによって,ネットワークに接続された世界のどこかのコンピュー タにあるデータを,あたかもそのテキスト内にあるかのようにみせることが可 能になります。これによりハイパーテキストでは,各テキストを容易に連携 させることが出来ます。つまりインターネット上に散在する情報を,WWW上で 相互に関連づけることが可能となります。
 現在ではインターネット上に無数に存在するハイパーテキスト群(WWWにおいて, これらは通常``ホームページ''ないしは``コンテンツ''と呼ばれます)が相互 につながりあって,まさしく網(Web)のようになっています。

2.2 アクセスのようす

 実際にハイパーテキストを見るには,ブラウザ(Browser)をもちいます。ブラ ウザとはHTMLを解釈し表示するツールのことです。 ブラウザはハイパーテキストの記述に従って,HTTP(Hyper Text Transfer Protocol)というプロトコルを介し,情報の置かれたサーバ(Server)にアクセ スして情報を得て,その情報を表示します。


図2 WWWでのアクセスの様子

 図2はWWWでのブラウザからサーバへのアクセスの様子を示して います。ユーザがハイパーテキスト上でリンクされている場所をクリックする と,ブラウザはサーバに対し,リンクの示す情報の転送を要求します。サーバ は要求された情報をブラウザに送ります。
 ブラウザは,サーバから得た情報をユーザに見やすいように表示します。具体 的に言いますと,ハイパーテキストでは表示フォントの大きさ,リンクの記述, 表示する画像の指定,画像の表示方法等がHTMLによって記述されており,ブラ ウザはこれを解釈して表示します。現在様々なブラウザが開発されています。 代表的なものとしては,Netscape Navigator (TM),Mosaicなどが 挙げられます。

2.3 インタラクティビティ(双方向性)

 またWWWでは,サーバに対してユーザがメッセージを送る ことも可能です。これはCGI(Common Gateway Interface)というインターフェー スを用いることにより可能となります。例えばユーザがホームページを見た感 想を書き込むことができたり,サーバ側がアンケートを行なうことなどが出来 ます。(ただし,CGIを利用するにはサーバ側がプログラムを書く必要がありま す)

 以上述べて来ましたように,WWWはネットワーク上に分散する情報間の結合を 行なうことができる上に,情報伝達の双方向性も持っていますので,効果的な 情報伝達手段であると言えます。

3.WWW の利用状況

 WWWが1989年に登場して以来,その利用者は増加の一途をたどっています。特 にここ1〜2年の増加は著しいものがあります。最近のWWW(およびGopher)のトラ フィック状況の統計を見てみましょう。(ここではGopherについては触れませ ん)


図3 NSFNETでのWWWのトラフィック量の推移(*1)

 図3はNSFNET(National Science Foundation NETwork) 内を流れたWWWのデータ量を,1994年1月〜1995年4月まで統計を取りグラフに表 したものです(*1)。 NSFNETとはNSF(全米科学財団)が管理している 米国の広域ネットワークです。図3より,WWWのデータ量 が急増していることが分かります。これはWWWの利用者が増加していることを 表しています。


図4 1995年7月〜1995年12月の大学院情報科学研究科へのアクセス数 (*2)

 一方,東北大学内にあるWWWサーバの利用者も増加しています。 図4は大学院情報科学研究科のWWWサーバに対するアクセス数の統計です (*2)。 95年7月以降,毎月のアクセス数が飛躍的に増加していることが分かります。
 WWWのユーザ数の増加傾向は,今後も続くものと予想されます。

4.WWW 上の新しい技術

 ごく最近までWWWのブラウザが表示するものは,基本的に文章や静止画に限られ ていました。ブラウザ上で直接アニメーションを表示したり,音を出したりな どをすることはほとんど行なわれてきませんでした。
 最近になってブラウザ上で動画と音声を再生したり,対話的操作を行なったり などの動的な表示を可能にする Java (TM) 言語や,3次元表示を行 ないWWW上に仮想空間を提供する VRML(Virtual Reality Modeling Language)な どが登場しています。ここではWWWにおけるこれらの最新技術を簡単に紹介しま す。

4.1 Java 言語

 Java言語は,ネットワークを意識したオブジェクト指向のプログラミング言語 です。Javaを用いるとWWW上で動的・対話的な処理が可能になるため,世界中 のWWWユーザが注目しています。
 現在,Java言語で作成されたプログラムを実行できるブラウザがいくつか開発 されています(*3)。 このブラウザを用いることにより,ユーザはJava言語で作成されたゲームで遊 ぶこともできますし,アニメーションも見ることができるようになっています。
 例えば Java言語を開発した Sun Microsystems 社 のホームページでは,Javaのマ スコットがブラウザの画面上を右から左へ,側転しながら通り過ぎるアニメー ションを見ることが出来ます。また,電話の画像があり,そこへマウスカーソル を持って行くと音をたてて受話器が動き出す様子も見ることが出来ます。
 Java言語の登場によりWWWで動的な表現が可能になり,WWWでの表現範囲が拡が ることが期待されています。 なお,本学大学院情報科学研究科ではJava言語を使用したページを試験的に 公開しています(*4)。

4.2 VRML

 VRML (Virtual Reality Modeling Language)はバーチャルリアリティ(仮想現 実感)の実現を目指した言語です。 現在,WWW上で仮想現実空間を表示するた めには,主にこのVRMLが利用されています。 図5はVRMLで記述された仮想現実空間の例です(*5)。


図5 VRMLで記述された仮想現実空間の例(*6)

 VRMLで記述されたファイルを,VRMLを解釈できるブラウザ (*6)で呼び出すと, 図5のような奥行きのある3次元画像を見ることが出来ます。 しかもユーザはマウスを動かすことによって,表示された3次元画像の中を動 き回ることが出来ます。更に3次元画像内を移動している際に,画像の中に作 られたリンクを通してネットワーク上の様々なリソースを参照することが可能 です。このように3次元空間内を移動できる機能が,仮想現実空間たるゆえん です。
 仮想現実空間はもっと壮大になり得る可能性を秘めています。例えばある家の 3次元画像をVRMLを使用して作成したとします。するとユーザはブラウザ上で 家の中を自由に動き回ることができ,更にドアに他の3次元画像がリンクされ ていたならば,そのドアを押すと,となりの家をあらわす3次元画像や,ある いは街中へ出かけて行く...といった仮想空間をネットワーク上に構成するこ とが可能です。これはWWW上に一つの町を作ることと考えられるでしょう。こ の町を更に拡張すると,ネットワーク上に仮想世界を出現させることも可能で あるかも知れません。紙面でお伝えするのは難しいので,実際に体験されるこ とをお勧めします。
 現在VRMLは発展途上の言語ですが,この先WWWの表現形態をより発展させる可 能性を秘めています。 なお,本学大学院情報科学研究科ではVRMLを使用したページを試験的に 公開しています(*7)。

5.むすび

 ここに書いたことをことさら理解しなくても,WWWは簡単に使うことが出来ます。 WWWでは何の知識も持たずとも,すぐにグラフィカルな情報の海の中に分け入っ ていけます。実はこの容易さがWWWの急速な発展の原因かも知れません。WWWに 少しでも興味を持たれましたら,ぜひ情報の海の中を遊泳してみて下さい。

[付記]
 筆者のURL

[注釈]
*1  by courtesy of The Internet Group (http://www.tig.com/)
*2   アクセス統計情報 (http://www.is.tohoku.ac.jp/statistics/)
*3  主なものとして HotJava (TM), Netscape Navigator (TM) 2.0 などがあげられます。
*4   Java (TM) \betaを使用したホームページ (http://www.is.tohoku.ac.jp/index-java-e.html)
*5  by courtesy of Jim Race (http://www.well.com/user/caferace/)
*6  主なものとして WebSpace (TM), WorldView (TM),VRWeb (TM) などがあげられます。
*7   VRMLを使用したページ (http://www.is.tohoku.ac.jp/VRML/)


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