東日本大震災からの創造的復興に向けて

情報シナジー機構長 鈴木陽一(*1)

 平成23 年3 月11 日14 時46 分に発生した東北地方太平洋沖地震は,東日本大震災として我が国,とりわけ東北地方に言葉では表現できないほどの甚大な被害をもたらしており,本学及び構成員にも被害が及んでいます。被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。
 このたびの震災では,特に地震直後に発生した大規模停電により,情報シナジー機構が所掌する本学の情報基盤,すなわちTAINS 幹線ネットワークや,統合電子認証システム・教職員グループウェアを始めとする各種の情報サービスに対しても大きな影響が出ました。また,各部局が管理運用するインハウスネットワークや部局システムも,大きな影響を受けていることを把握しています。
 震災後の本学の復旧活動をしっかりと支えるためには,TAINS を始めとする情報基盤の迅速な復旧が不可欠でしたが,幸いにして,地震発生から2 日後には情報シナジー機構が所掌するTAINS 幹線ネットワークや最低限の各種情報サービスをいち早く復旧させることができました。これらの復旧には何よりも地震発生直後の大規模停電からの復帰が必要でしたが,井上総長を始めとする災害対策本部の皆様の情報基盤に対する深いご理解と適切なご判断により,本部事務機構施設部ならびに関係者のご尽力のもと,3 月13 日には,情報機器が集中するサイバーサイエンスセンターに素早く通電していただきました。サイバーサイエンスセンターに設置している各ネットワーク機器やサーバは,調達時から施していた耐震対策が功を奏し,通電後すぐにTAINS 幹線ネットワーク,統合電子認証システム,教職員グループウェア,及び各ネットワークサービスが大きな問題もなく立ち上がりました。なお,各キャンパスの建物に設置されているTAINS ネットワーク機器についても,部局のご担当の方々のご協力のもと,順次復旧しています。献身的なご尽力をいただいている全ての皆様に厚く御礼申し上げます。
 情報シナジー機構では,震災を受けていくつかの応急的措置を実施してきました。具体的には,建物の損傷等により,サーバの復旧に時間を要する部局には,臨時的にホスティングサービスを提供しました。また,サイバーサイエンスセンターとの協力の下,緊急を要するいくつかの部局に対しては,サイバーサイエンスセンター内へのサーバの仮置きを行いました。例えば,教育情報基盤センターに協力し,学生用電子メール(s.tohoku.ac.jp) の転送サービスのためのリソースを提供しています。また,教員室や研究室が使えなくなり講義室等に仮移動している職員向けに,ネットワークの移設作業等を行いました。来学することが困難な構成員を有する研究室等向けには,応急的にリモートアクセス(VPN) の臨時アカウントのサービスを始めています。なお,しかしながら,情報シナジー機構が有するリソースには限りがあり,震災の影響により一部未だ回復していないリソースも存在しています。しばらくはご不便をおかけすることもあるかと思いますが,部局の皆様にはどうぞご理解いただき,なにとぞご容赦下さりますよう,お願い申し上げます。
 仙台市内は,当初想像していた以上の速度で復旧しているように感じられます。この記事が掲載されるTAINS ニュースが印刷され,配送され,皆様のお手元に届いているということは,都市機能のかなりの部分が通常に戻っているものと思います。それにも増して,本学の復興の勢いが加速していることは言うまでもないでしょう。この復興にあたっては,旧に復するのではなく,「創造的復興」を成し遂げることが内外から期待されています。情報シナジー機構は,この創造的復興をしっかりと支える情報基盤をこれからも提供し続けてゆきます。それと共に,今回の震災の傷跡を克服し創造的変身を遂げるであろう本学を高い次元で支えうる情報基盤の提供を目指したいと考えます。皆様のご支援とご協力を改めてお願い申し上げます。
(*1)東北大学電気通信研究所教授