ユビキタスネットワークシステムの導入について

サイバーサイエンスセンター 水木敬明
サイバーサイエンスセンター 曽根秀昭

1 はじめに

 サイバーサイエンスセンターは,関係各位のご尽力により平成21 年度補正予算を措置いただき,情報シナジー機構との密接な連携のもと,ネットワークアクセス環境のユビキタス化に向けた整備を主目的として,先般「ユビキタスネットワークシステム」を導入することができました。
 ご存知のように,東北大学の第四世代キャンパスネットワークであるStarTAINS は,2008 年度より制度化された全学的基盤経費の全学的情報化推進経費によって調達・導入され,2009 年度に本格的運用のスタートを切りました。StarTAINS は,その名称に「スモールスタートからの発展」という意味も込められていました[1] が,まさに今回のユビキタスネットワークシステムの導入により,StarTAINS は格段に増強・拡充されました。
 本稿では,StarTAINS がどのように進化したのかについて,

「TAINS 無線LAN システムの導入」,
「外部メールサービスの提供」,
「基幹ネットワークの強化」
に分けて,その概要を述べます。

2 TAINS 無線LAN システムの導入

 ユビキタスネットワークシステムの中心に据えられるのは,「TAINS 無線LAN システム」の導入です。学内に無線アクセスポイントを整備し,eduroam のアカウントサービスを開始することにより,東北大学のユビキタスネットワーク環境はより強化されました。

2.1 アクセスポイント整備

 「どこでもTAINS」やeduroam に対応した無線アクセスポイントを,附属図書館,マルチメディア教育研究棟や厚生施設をはじめ,全学の委員会等が開かれる頻度の高い会議室等の共用エリア30 箇所に設置しました。具体的な設置場所を含め,より詳細な情報がTAINS ニュースの本号記事[2] にありますので,どうぞそちらもご覧下さい。
 学内のVPN サーバにアカウントを持つ利用者は,どこでもTAINS を通してTAINS 無線LAN システムを利用できます。また,eduroam のアカウントを持つ世界中の利用者は,無線LAN ローミング基盤eduroamを通してTAINS 無線LAN システムを利用できます。

2.2 eduroam アカウントサービス

 本学の教職員に対して「eduroam アカウントサービス」を提供しています。詳細は本号記事[3] をご覧いただきたいと思いますが,東北大ID を持つ本学の教職員は,統合電子認証システムにおいてサブID を登録することにより,自動的にeduroam のアカウントを取得することができ,TAINS 内だけにとどまらず,世界中のeduroam に対応したアクセスポイントにおいて無線LAN を利用することができます。教職員の皆様,どうぞお試し下さい。

3 外部メールサービスの提供

 持続可能性を探る先進的取り組みとして「外部メールサービス」を導入しました。すなわち,本学へ無償で提供されるヤフー株式会社の「Yahoo! メールAcademic Edition」およびグーグル株式会社の「Google Apps Education Edition」と連携して,東北大ID を持つ管理者が自由にアドレスを発行できる簡易なシステムを構築しました。詳細は本号記事[4] をご覧下さい。
 なお,もちろん,この外部メールサービスは,希望者のみを対象とした補助的・補完的なものであり,利用を強制するものではありません。主な対象は,外部メールの特徴・性質を良く理解している本学構成員等のうち,学内の既存のメールサービスの利用資格を有しない方や,実験的に使ってみたい方等を想定しています。

4 基幹ネットワークの強化

 本学のユビキタスネットワーク環境をしっかりと支えるためには,利用者の皆様に直接には見えにくいかもしれませんが,StarTAINS の基幹ネットワークもさらに強化していく必要があります。
 StarTAINS では,主要な接続点となる各建物にエッジルータER を設置し,各インハウスネットワーク(部局等のネットワーク)を収容しています。エッジルータER は,サイバーサイエンスセンターに置かれた基幹ルータKR と接続し,これにより各キャンパスに広がるスター状のネットワークを構成しています。



図1: エッジルータと基幹ルータ間の二重化

 この各エッジルータER と基幹ルータKR 間について,これまでは1 本の1 Gbps で接続されていました(図1 の左側参照)。すなわち,各ER は,2 つあるKR のうち,一方だけに接続していたことになります。そこで,今回のユビキタスネットワークシステムの導入により,この接続を2 本の1 Gbps に増強しました(図1 の右側参照)。これにより,各ER は両方のKR に接続するようになり,回線の二重化が実現されました。
 以上により,ユビキタスネットワークシステムの導入後の基幹ネットワークの構成は,図2 の通りとなります。



図2: 現在のStarTAINS 基幹ネットワーク構成

5 おわりに

 以上記載のシステム・サービスの他,ユビキタスネットワークシステムでは,既存のネットワークサービスの増強やセキュリティ強化を行うとともに,サイバーサイエンスセンターが進める最先端学術基盤構築に資するべく,先端的キャンパスユキビタスネットワークを実現するための研究基盤を整備しています。
 ユビキタスネットワークシステムの導入にあたりましては,学内外の多くの皆様のご協力をいただきました。特に,いつもご議論いただく情報シナジー機構・ネットワークワーキンググループの皆様には,今回のユビキタスネットワークシステムの仕様策定・運用開始にあたりましても,貴重なご助言やサポートをいただきました。部局総括責任者・部局実施責任者・部局技術担当者を始めとする各部局の皆様には,無線LAN アクセスポイントの設置にあたり,多大なるご協力をいただき,誠にありがとうございました。また,ユビキタスネットワークシステムの導入にあたりご尽力いただきました東日本電信電話株式会社宮城支店の皆様に厚く御礼申し上げます。
 この先もStarTAINS が発展してくために,今後とも,学内の皆様のご理解・ご協力をよろしくお願い申し上げます。

参考文献

[1]ネットワークワーキンググループ, “新TAINS の名称とロゴマークについて,” TAINS ニュース, No.37,pp.3–5, 2009. (http://www.tains.tohoku.ac.jp/news/news-37/0305.html)
[2]後藤英昭, 水木敬明, 曽根秀昭, 七尾晶士, 澤田勝己, 北澤秀倫, 森倫子, “東北大学におけるキャンパス無線LAN サービスについて,” TAINS ニュース, No.39, pp.10–14, 2011. (http://www.tains.tohoku.ac.jp/news/news-39/1014.html)
[3]七尾晶士, 水木敬明, 後藤英昭, “eduroam アカウントサービスの運用開始について,” TAINS ニュース,No.39, pp.15–21, 2011. (http://www.tains.tohoku.ac.jp/news/news-39/1521.html)
[4]澤田勝己, 森倫子, 水木敬明, “外部メールサービスの運用開始について,” TAINS ニュース, No.39, pp.22–27, 2011. (http://www.tains.tohoku.ac.jp/news/news-39/2227.html)